その時だった。
湯船の中に、何かがいる。
スマートフォンの画面を向ける。
暗闇の中に、黒いシルエットが浮かんでいた。
それが頭なのかどうかも、最初は分からなかったという。
湯船には水が張られていたが
その水はまったく揺れていない。
そのシルエットは、湯船の中で座っているように見えた。
そして、うつむいている。
動かない。
まったく動かない。
静まり返った風呂場。
まるで時間そのものが止まってしまったようだった。
父は、あまりの恐怖に腰を抜かして
その場に崩れ落ちながら、
「お前! 何やってるんだよ!
なぁ! 何してるんだよ!!」
と、何度も叫んだ。
しかし、シルエットは何も答えない。
静まり返って全く動かない。
父は腰を抜かしながら何とか立ち上がり、慌てて玄関から飛び出した。
そのまま車へ向かう途中、住民の人とすれ違った。
震える声で挨拶をしたらしい。
そして車に戻ると、震える手で母に電話をかけた。
父の様子がおかしいことに気づいた母は、
「警察を呼ばないと!」
と伝えた。
それからどのくらい時間が経ったのかは分からない。
やがて、何人もの刑事が現場にやって来た。
刑事が風呂場へ入る。
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