その直前、
「親族は見ないでください!」
と、最初に言われた。
そして、風呂場から刑事の声が聞こえた。
「こりゃあ……黒鬼だな」
私は後からその言葉が気になって調べてみた。
法医学の現場では、遺体の腐敗状態を表す俗称として「赤鬼」「青鬼」「黒鬼」「白鬼」などと呼ぶことがあるらしい。
その中でも「黒鬼」は、腐敗が進んだ状態を指す言葉だという。
後から聞いた話では、叔父は長時間湯船の中にいたことで、頭皮が腐敗し、剥がれたものが湯船の底に沈んでいたらしい。
もし父の視力が良かったら
あの暗闇の中で、いったいどんな状態を目にしていたのだろう。
考えるだけでも恐ろしい。
しかし
恐怖は、まだ終わらない
遺体が運び出されたあと、部屋には特殊清掃が入った。
父が電話をして業者を探したらしい。
そして特殊清掃員が風呂場を見て、こう言った。
「いやぁ、ステンレスのお風呂で良かったですね!
これなら交換しなくても大丈夫です。
綺麗にしたら、そのまま使えますよ」
その言葉を聞いて、父は複雑な気持ちになったという。
特殊清掃が終わったあと、父が風呂場を確認すると、
「本当に、そのままのステンレスだった」
と言っていた。
そして、さらに恐ろしいことに
大家が面倒に感じたのか。
それとも、わざわざ説明しなかったのか。
事故物件になったのかどうかも分からない。
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