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不思議体験

しんいちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

裏かくれんぼ 二の怪
長編 2026/08/11 02:54 37view

 
 ある男性がいた。
 仮にAさんとする。
 
 Aさんは早くに妻を亡くし、一人娘だけを支えに生きていた。
 
 だが、その娘も事故で亡くなってしまう。
 小学校を卒業し、中学生になることを楽しみにしていた矢先だった。
 
 Aさんは深く落ち込んだ。
 仕事に復帰しても以前のような笑顔は戻らない。
 
 そんな中、彼は思うようになる。
 もう一度だけ。
 娘に会いたい。
 
 占い師にも頼った。
 霊能者にも頼った。
 だが、誰も娘を連れてきてはくれなかった。
 そして偶然見つけたのが、『裏かくれんぼ』だった。
 
 半信半疑のまま儀式を行う。
 一回。
 二回。
 三回。
 
 何も起こらない。
 
 四回。
 
 それでも駄目だった。
 そして諦めかけた五回目の夜。
 
 娘が現れた。
 涙を流しながら言葉を交わした。
 もう会えないと思っていた娘が目の前にいる。
 その喜びは想像もできないほど大きかった。
 
 翌日、Aさんは会社でその話をした。
 しかし誰も信じない。
 
 幻覚だろう。
 精神的に参っているだけだろう。
 
 周囲はそう考えた。
 
 ただ一人、親身になってくれる友人だけがいた。
 その友人は言った。
 
「本当かどうかは分からない。でも、死者を呼ぶなんて危険じゃないのか?」
 
「娘さんだって安らかに眠れないだろう」
 
「もうやめた方がいい」
 
 その言葉を聞き、Aさんは頷いた。
 
 もうやらない。
 
 そう約束した。
 
 それからしばらくして、Aさんは元気を取り戻していく。
 
 会社の人間も安心した。
 だが、ある時から再び様子がおかしくなった。
 落ち込んでいるわけではない。
 何かを考え込んでいる。
 
 そして独り言を繰り返している。

 友人が近付いた時、その言葉が聞こえた。
 
「もう骨がない……」
 
「どうしよう……」
 
「もう骨がない……」
 
 嫌な予感がした。
 問い詰めると、Aさんは儀式をやめていなかった。
 
 娘と会う時間を増やしたかった。
 もっと長く話したかった。
 その気持ちが止まらなくなっていた。
 
 最初は遺髪を使った。
 それがなくなると骨壺の遺骨を使った。
 
 そして今、その遺骨もほとんど残っていないという。
 
 友人は怒った。
 
「いい加減にしろ!」
 
「娘さんの骨まで使うのか!」
 
「残っているなら今すぐ墓に戻してやれ!」
 
 Aさんは俯きながら、
 
「分かった……」
 
 と答えた。
 
 だが、その一週間後。
 Aさんは会社に来なかった。
 
 翌日も来なかった。
 不安になった友人と上司は家を訪ねた。
 
 玄関は開いていた。
 呼びかけても返事はない。
 そして押し入れの中でAさんは見つかった。
 
 死んでいた。
 
 だが、その顔は異様だった。
 まるで何かとてつもないものを見たかのように。
 恐怖で引きつった顔をしていた。
 
 警察を待つ間、友人は仏間へ向かった。
 そこには骨壺があった。
 
 中を見た。
 何も入っていなかった。
 
 本当に何も。
 灰すら残っていなかった。
 
 友人は思った。
 最後の遺骨を使い。
 娘に会うために押し入れを開けたのだと。
 
 そして連れて行かれたのだと。
 
 その後。
 
 友人は行きつけのバーで、この話をマスターに聞かせた。
 

 するとマスターは首を傾げた。
 
「でも、おかしくないですか?」
 
「もし本当に娘さんに会えたなら、そんな顔で死にますかね」
 
 友人は言葉を失った。
 マスターは静かに続けた。
 
「一度使ったぬいぐるみを処分しなかったんじゃないですか」
 
「だから娘さんじゃない何かが来た」
 
「そして、その何かに連れて行かれた」
 
 それを聞いた友人は何も言えなくなった――。
 
 そこまで話し終えた時。
 怪談会の空気は完全に出来上がっていた。
 
 全員が黙り込んでいた。
 誰も話の続きを催促しない。
 それほど聞き入っていた。
 そして少し間を置いてから、清水さんは笑った。
 
「……という創作でした」
 
 一瞬静まり返ったあと、
 
「何だよ!」
 
「騙された!」
 
「普通に怖かった!」
 
 そんな声が飛び交った。
 だが反応は上々だった。
 
 設定の話になり、もっとこうした方がいい、こういう展開も面白いと盛り上がった。
 
 去年の失敗は完全に取り返した。
 清水さんはようやく胸を撫で下ろしたという。
 
 そして翌年。
 
 大学最後の夏は、全員の予定が合わずキャンプは中止になった。
 やがて四人は卒業し、それぞれ社会人になった。
 
 それでも付き合いは続いた。
 定期的に飲みに行き、昔話をした。
 あの怪談会の話も時々話題になったという。
 
 そして社会人になって二年。
 
 三年目に入ろうとしていたある土曜日の朝。
 仕事へ行く準備をしていた清水さんの携帯が鳴った。
 
 画面には山下さんの名前が表示されていた。
 珍しいな。
 そう思いながら電話に出る。
 
「どうした?」
 
 すると山下さんは少し沈んだ声で言った。
 
「今日、時間あるか?」
 
「ちょっと会って話したいことがあるんだ」
 
 と続けた。
 その声は、どこか妙に重たかったという。

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