「これ」
そう言ってCが右手を見せてくる。
薬指に指輪が光っていた。
「え、今も?」
あまりの驚きに手元が狂って酒の入ったグラスをこぼしてしまう。
あーあー……と嘆きながら、私はキッチンまで布巾を取りに行った。おかまいなしに、Cが話を続ける。
「いつか別れようって思ってたけど、なんだかんだ続いてさ、長く一緒にいれば情も出てくるし」
声がくぐもっている。また突っ伏しているのだろう。
「山田があたしのこと『死神』って言ったのだって、ただ口が滑っただけだってことももう分かってる。付き合っていくうちにどんどん良いところも見えてきたし、実際本当に好きになっていった」
私はこぼした酒を拭きながら、話の続きを聞く。
「だけどさ、消えないのよ。全然。いつも考えちゃう」
何を?おそらく答えは分かっているが、先を促す。
「デートしてる時も、一緒にテレビ見てる時も、愚痴言い合ったりしてる時も、ふと『あ、殺せる』って。事故に見せかけて。相手の立場を壊して。心を壊して」
ずずっ、と鼻を啜る音がする。アルコールのせいで饒舌になっている。
「なんで?好きなのに。好きになったのに。でも、ふっと身体が動いちゃう時もある。スーパーで漂白剤買う時とか、洗濯物をベランダに干す時とか。全部、あいつにつながっちゃう」
いよいよ泣き声に変わってきたので、私はCに近づいて肩をさすってやる。
ふと、Cの嗚咽が止まる。
「あたし、プロポーズされた」
かける言葉が出てこない。
「でも、怖くてすぐに返事できなかった。嬉しかったのに、自分がわからない。だから、今日もあいつとの約束けって飲み会に……」
その後の言葉が聞き取れない。
大丈夫だよ、きっと結婚に対する不安でそんな風に考えちゃうだけだよ、と私が言うと、それを遮るように
「違う、違うの。まだ言ってないことがある」
Cの身体が震えている。
「リエちゃんとミカは、今もいて……それで、それで……」
うぅ、と嗚咽のような声を発して、そこで言葉が途切れる。Cの身体から力が抜ける。
Cは泣き腫らした顔のまま、すうすうと寝息をたてていた。
それから半年ほど経った後。
結婚式には、私も参加した。
Cは大きなお腹を恥ずかしそうにさすっていた。双子だそうだ。
ウエディングドレスのCを見て、私も涙が溢れてくる。
ふと、Cと目が合う。
ちょっと困ったような、でも幸せそうな表情を私に向けている。




























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