私は市役所で戸籍のデータ化を担当している。
古い紙の資料を整理し、電子化する仕事だ。
ある日、一つの家族の記録に違和感を覚えた。
山田家。
父:正雄
母:由美
長男:浩一
長女:美咲
昭和の終り頃まで、確かに4人家族だった。
しかし、平成に入った記録から長男・浩一の名前だけが消えている。
普通なら、死亡や転出などの記録が残る。
だが、浩一にはそれが無かった。
出生記録はある。
学校の記録もある。
卒業アルバムにも名前がある。
なのに、ある時期から、行政上の記録だけが途切れていた。
まるで、
「最初から存在しなかった」
ように。
気になって、古い書類を調べた。
すると、山田家が昔住んでいた住所の資料が出てきた。
現在は別の人が住んでいる。
私は、たまたまその家の近所で、その家の近くの住人に話を聞いてみた。
「昔、この家には子供が二人いたはずなんだけどね。」
「お兄ちゃんが居たんだけど、いつの間にか姿も話にも出なくなった。」
私はがぜん興味が沸き山田家の現在の住所を調べた。
そこには今、母親の由美さんが一人で暮らしていると記録されていた。
仕事帰り、近くを通ったので家の前まで行ってみた。
普通の古い一軒家。
表札には、
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