そして、4日目の夜。 その日は雨が降っていて、いつもより廊下が暗かった。 深夜2時半。 ピンポンパンポーン。
私はあらかじめ玄関のすぐ横にスタンバイしていた。 鳴った瞬間に覗き穴を見るためだ。手には護身用代わりの金属バットを握っていた。 チャイムが鳴り終わる前に、私は覗き穴にピタリと目を押し当てた。
誰もいない。 「……またか」 そう思ってホッとしたと同時に、視界の端、ドアの真下の隙間あたりに何か「白いもの」があることに気がついた。 よく見ようと目を凝らした。
それは、人間の「目」だった。
髪の長い女が、冷たいコンクリートの床にうつ伏せに這いつくばって、首をありえない角度に真上へ曲げ、覗き穴を逆から見上げていた。 白目をひん剥いて、こっちをジッと見ている。
「ヒッ……!」 声が出そうになるのを必死で飲み込んだ。 女の口が、パク、パク、と動いているのが見えた。声は聞こえないが、口の動きでわかった。
『あ・け・て』 『あ・け・て』 『あ・け・て』
全身の毛穴が開くって、ああいう感覚を言うんだと思う。 手足の震えが止まらない。バットを落としそうになるのを必死に握りしめた。 私はドアの鍵(U字ロックとシリンダー)が閉まっていることを目で確認し、絶対に開けないと心に誓って後ずさりしようとした。
その時だ。
ドアの向こうの女の口の動きが止まり、ふにゃりと気味の悪い笑顔を作った。 そして、今まで声を出さなかった女が、はっきりとした、普通に綺麗な声でこう言った。
「……なんてね、開いてるの知ってるよ」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!!!!
狂ったような勢いでドアノブが回された。 ガン!ガン!とドアが揺れる。 鍵は閉まっている。開くはずがない。私は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。


























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