気が付けば、喪服姿の男たちはすぐ後ろまで迫っていた。
距離が急速に縮まっていく。
小学3年生の男子の中でも下から数えた方が早い脚力しかなかった私が、大人たちに追いつかれ、取り押さえられるのにそう時間はかからなかった。
大人の腕力で体を完全に固定化され、間もなく迎えに来た車へと乗せられた。
車の中では、あまりの恐怖に泣き叫ぶ私を、叔父が優しい顔で宥めた。
前の春休みに従兄と釣りに連れて行ってくれたあの時と全く変わらない表情で。
「大丈夫。すぐに終わるからね。」
その一方で、私の体を拘束する腕力は少しとして弱められることはなかった。
「これで、偉大なあのお方も少年の姿でこの世に舞い戻られるんだ」
絶望のさなか、助手席と運転席での会話が聞こえてきた。
葬儀会場に戻り、私は僧侶と向かい合った席に再び座らされると、もう逃がさないと言わんばかりにその周囲を大人たちが輪を作って完全に囲った。
その異様な光景の中で僧侶の呪文が響き渡る中、私は幼稚園の年長の時に友達と「かごめかごめ」をして遊んだことを思い出していた。
「そういえばあの時もこんな感じだったっけ・・・」
当時は、その直後に些細なことで友達と激しい喧嘩をして、幼稚園の先生や母親にも叱責されたのだが、今はそれすらも懐かしく感じる。
祖父が最後に言っていたのはこういうことだったのだろうか。
再び激しい頭痛が襲う。
薄れゆく意識の中、私はサメのぬいぐるみを抱きしめながら祈るように身を前に倒した。
「こんなことはやめなさい」
その瞬間、葬儀会場全体に、明らかに僧侶とは違う声が響いた。
会場が静寂に包まれる。
「こんなことをするのは、もうやめなさい」
低く、重厚感のある声。
祖父の声だった。
それは、私の胸に抱かれていた、祖父に買ってもらったサメのぬいぐるみから聞こえていた。
しばらく息を飲むような静寂が場を支配した後、至る所から啜り泣く声が聞こえてきた。
それは祖父との本当の別れを惜しむものだったのか、あるいは自分達の罪業を自覚し、狼狽するものだったのかは今でも分からない。
異様な雰囲気に包まれた葬儀会場の中で私は暫し呆然とした後、助かったという安堵と祖父の優しさに最後に触れられた喜びに、密かに涙を流した。
「お爺ちゃん、ありがとう・・・」
あの後のことはよく覚えていない。
気が付いたら遺族用の控室のソファに寝かされていた。


























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