今日は給食費の提出日だった。
放課後担任に一人づつ手渡すのだが、生徒の何人かが給食費の袋が無くなっていると騒ぎだした。
教室内が騒然とする中、
大島は「取り敢えず今日は家に帰りなさい」と皆に言った。
だが、なぜかS美だけは居残りを命じられた。
確かに彼女のうちは母子家庭でもあったし、裕福ではない。
中学に上がってからのS美は何もかもが嫌になって学校をサボりゲームセンターで遊んだりタバコを吸ったりして、補導されたこともある。
だが人のお金を盗ったりしたことは一度もない。
何を言っても黙りこむS美にとうとう大島は諦めたのか、一回大きくため息をついて立ち上がる。
そして去り際に独り言のようにこう呟いたのを、彼女は決して聞き逃さなかった。
─腐ったりんごが、、、
S美は、、、
幾日もの風雪に耐えて育ったりんごがちょっとした自然のいたずらで枝から落ちて傷付き売り物にならなくなり、簡単に捨てられるということをふと思い出した。
そしてその時彼女はようやく母が口ずさんでいたあの歌の「りんごの気持ち」とやらが分かったような気がする。
でも、もう遅かった、、、
※※※※※※※※※※
風圧で瞼も開けられないくらいの猛スピードで落ちるS美の目前には既に、駐輪場の灰色の屋根が迫ってきていた。
【了】
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