雑木林の向こう側にうっすら水面が見えてる。
ダッシュで逃げたよ。とにかくその場から離れたくてさ。
足がもつれてうまく走れなかったけど、もう怖くて怖くて。
カバンの中でスマホが鳴ってんだけど、構ってらんない。こっちはもうパニックなんだから。
大きな通りまで来たところで、もう走れなくなってさ。
膝に手を置いて、立ち止ったんだ。
両膝が震えてんのか、手が震えてんのか分かんないけど、ガクガクしてるのが止まらなかったよ。
街灯の明かりと、ときたま通る大型トラックとかの光がこんなにも嬉しかったことは無かったな。
さすがに次の日は会社行けなくてさ。申し訳ないけど有給使わせてもらうことにしたのよ。
連絡しようと思ってスマホ見たら
’着信がありました’
って表示されてんのよ。
ロック開いて一応確認したけど、案の定「非通知」なワケ。1件だけだったけどね。
速攻で削除して、そのまま会社に電話一本入れてソファに倒れこんだ。
起きたらもう15時近くになっててさ。
足もだいぶん動くようになったから、近くの自販機にジュース買いに行ったんだ。
自販機の手前で、アプリ起動しよう思ってカバン開けたら、ポロっとイヤホンが片方落ちちゃってさ。
慌てて拾ったんだけど、イヤホンから何か再生されてるみたいな音が聞こえんのよ。
とっさに耳に近づけたらさ
「藤田さぁん。藤田さぁん…。赤迫池までぇ…。ご連絡下さいぃ…。繰り返しますぅ…」
あの粘っこいおっさんのアナウンスが流れてる。
池は最初から俺を呼んでたんだ。
























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