出てきたのは、女の子だった。
スカートの色も、髪型も、絵日記に描かれていた子と同じ。こちらを見て、何か言おうとしているのに、声が出ていない。唇だけが震えていた。
逃げようとした瞬間、運転席の男に腕をつかまれ、そのまま車内へ引きずり込まれた。
クラウンは音もなく走り去った。
***
気がつくと、布団の中にいた。
夢だったのだと理解したが、胸のざわつきは消えなかった。ふと、昔のことを思い出す。
大人しくて、いつも一人でいる子は危ないんだ――
誰かがそう言っていた。夢の女の子の顔が、小学生の頃に配られた捜索願いの写真と重なった。
失踪した時の服装。スカートの色。通っていた塾の場所。全部、絵日記と一致していた。
「なんで今さら……」
15年も前の話だ。実家を出て、今は別の集合住宅に住んでいる。前の住人の忘れ物だとしても、説明がつかない。まだ夢の中にいるような感覚のまま、枕元を見ると、絵日記が置かれていた。
震える手でページをめくる。
家の中の絵が描かれていた。
備え付けのタンス。部屋の真ん中にある邪魔な柱。窓の位置。見渡してみたが、やはり僕の部屋と一致した。
身震いがする。
窓が開いていたが、僕は開けた覚えがない。
あの夜の道路のページを開いた。
ページの隅に、細い筆跡でこう書かれていた。
「ずっと見てたよ」
その文字だけが、紙の上に浮いているように見えた。
部屋の空気がひどく静かになった。
まるで誰かが息を潜めて、僕の反応を待っているようだった。
振り返ることはできなかった。



























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