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心霊

さかなさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

コ クリさん
長編 2026/04/06 20:25 53view

幼馴染の女の子の話。
僕の幼馴染のS子は小学校の頃から男子にまざって遊ぶのが当たり前、ドッヂボールなんかやったら男子に顔面ボールで泣かすのがあたりまえ、クラスメイトでケンカがあったらS子が出て行ったらその場で解散、
みたいな、女の子なのにガキ大将を地でいくやつで、だからといって見た目からしていかついってことはなくて、女子にしては背は高いけど、むしろ黙ってすましてたら結構美人な方ってやつだったのだけど、S子が他人に言えないというか、唯一僕だけに明かしてくれた趣味がオカルトだった。
中学一年の頃の下校中に、家が近所だったS子と歩いてる時に突然「あたしな、内緒にしてたんやけど、お化けとかUFOとか好きなん。これ、他の人に言うたらアカンで?」と言われた。
その後の会話の流れで話してくれたところによると、S子は霊感があるというわけでもなく、月刊ム〇ーとかテレビの心霊やUFOとか特集は欠かさず観てるという単にオカルトが大好きってだけで、心霊スポットに凸とかまではいかない、いわばオカルトのライトオタクだった。
そんなS子と僕が唯一体験した、心霊現象?的なこと。

中学三年のころ。
昼休みに、僕の教室に来たS子が小声で「なあK太郎(僕のこと)、放課後さあ、あたしんとこの教室来てくれへん?」と言ってきた。「ええけど、なにするん?」と訊いても「それはないしょ。あ、他の子ぉらには知られへんようにしてな。絶対知られたらアカンに?」と妙にあせっている、というか、僕に話しかけているところを他の人に見られたくない感じではぐらかされた。
普通に考えればこういうやりとりというのは放課後の誰もいない教室で恋の告白、みたいなシチュエーションを想像してしまうものだが、実は僕もほんのちょっとだけ「K太郎、あたしとつきあって」みたいな事を期待してしまった。S子はまあまあ美人な方だったから。
その日の放課後。言われた通りS子の教室に行くと、そこにS子が一人で待っていた。自分の机に座ったS子はドアを開ける音に首だけをこちらに向けると、嬉しそうにニンマリ笑って「ちゃんと来たなあ。他の子ぉらにバレてへん?」と訊いてきた。この時点で僕は(あ、こりゃ告るとかじゃないな)と悟ったが、だからといって帰るわけにもいかない。「来たけど、なに?なんかするんか?」と訊くと、S子はカバンから大きめの紙を取り出しながら「コックリさんするで、つきあって」と言った。

「は?」「やで、コックリさん。」「なんで?」「なんでって、コックリさんて一人でできへんやん」「いや、やで(「いや」、「だから」の意)、なんで僕?」「やって(「だって」の意)、あたしのオカルト趣味知っとるんアンタだけやん」「いや、ほんでコックリさんて・・・」
つまりは、コックリさんをやってみたいから、周囲には秘密にしているS子のオカルト趣味を唯一人知っている僕に「一緒にやれ」と声をかけたというわけだ。
当時でもコックリさんはメジャー中のメジャーなオカルトで、オカルト大好きなやつじゃなくても「あれはヤバい」だの「あんなもんインチキや」だのと議論になっていた代物、言うなれば古典に属するオカルトであり、それだけにど真ん中のオカルトでもある。
S子に「コックリさんやるで」と言われた僕は、正直やりたくなかった。僕はオカルトを信じてる方じゃないが、コックリさんは「ヤバい」派だったし、怖かったから。
しかし、誰もいない教室でまあまあ美人なS子と二人きりで向かい合って・・・という状況は健康な中学生男子を魅了するに足るものであったし、これまでのやりとりから「コックリさんにビビってる僕」はもう十二分にS子とにバレてるにも関わらず、「怖いからやだ」は男の子の意地で言えなかった。このチンケな意地というかかっこつけのせいで、僕はこのコックリさんをしたことを本当に後悔することになる。

「ええ?(いいね?の意)やんで?やり方は知っとるやんな?」向かい合わせで座った机にコックリさんの用紙を広げたS子が僕に確認する。
S子がポケットから取り出した10円玉を鳥居の上に乗せ、その上に二人の人差し指。「ちから入れたらあかんで?」とS子が言い、次いで二人でコックリさんを呼び出す有名な呪文?「おいでください」を唱える。
「もしおいでくださってたら『はい』とお答えください・・・」その途端、10円玉は流れるように『はい』の位置に移動した。僕の指には引っ張られたような感触や感覚はない。つまりS子が意図的に動かしたのではない、と直感した。S子の顔を見ると、S子も同じように思ったのだろう。びっくりした、マジか、ちょっと怖いといった感情が入り混じった表情をしている。
そこからS子はいくつかの質問をしたのだが、それらはみんな明日の天気だとか、クラスメイトの誰が誰を好き(S子と僕のことは質問しなかった)だとかで、コックリさんの答えも「はれ」とか「さとう、たなか」とか、どうとでもとれるような答えばかりだった。それでも僕は本当にこれ、こんなことが現実に起こるのか!?って、そこにだけ意識が向いてて、今思い出すとコックリさんの答えのぞんざいさには意識が向いていなかった。
そしてこの後、「やらなきゃよかった」と後悔する出来事が起こることになる。

S子が「ありがとうございました。お帰りください」と言った瞬間。10円玉が鳥居ではない方向に動きだした。
『ず』『つ』『と』『み』『て』『ま』『し』『た』『つ』『き』『あ』『つ』『て』『く』
その瞬間、グイッと10円玉が「いいえ」の方に動かされた。これは明らかにS子がフルパワーで動かしたんだとはっきり分かった。
そのままS子はコックリさん用紙をぐしゃぐしゃに丸めて床に叩きつけ、10円玉を窓から校舎の裏山にフルスイングで投げ捨てて、「あほっかあーーーー!!誰がおまえなんぞとつきあうかーーー!!!」と叫んだ。
それから少しのあいだ、「こんなもんコックリさんやのおてコクりさんやんけなんじゃそら。ああ、なんじゃそれは」とかブツブツ言っていたが、いやいやいや、おまえがコックリさんやる言うたんやんとか、女の子がやんけとかなんじゃとか言うなやとか、そういうツッコミも含めて何と声をかけていいかわからなかった僕にS子はゆっくり振り向くと、「・・・帰ろか」と一言言い、カバンを持ってスタスタと歩き出した。
慌てて自分のカバンを持って追いかける。S子は身長があるだけに足が速い。走って追いついた時にはS子は校門を出たところだった。
女の子らしからぬ大股で歩きながら、S子は僕の方を見もせずに一言だけ「今日のこと、誰かに言うたらアカンで。わかった?」と有無を言わさぬ口調で言い、僕は「・・・わかった」と応えるしかなかった。

その後、コックリさんでありがちな、正しく終わらなかった時の祟りとか怪奇現象みたいなことは一切なかったのだけど。僕がS子に告白してフラれたという噂がたちはじめたのは、それから数日後のことだった。最初はなぜそんな噂が出てきたのかさっぱりわからなかったのだけど、ハッと思い当たったことは。
あの日、S子の「誰がおまえなんかとつきあうか」という声を聞き、その後にS子と僕が校舎から出てきたところを見た誰かがいたのではないか、ということだった。だとしたらとんでもない誤解だし、とんなとばっちりである。大体あの日の僕たちを見ていたのなら、僕とS子は一緒に帰っているのだから、もし告白して振られた後の行動なら不自然じゃないかと思うのだが・・・。
何よりまいったのは、そんな噂がたっていても断固として自身のオカルト趣味を知られたくないS子に『コクりさん』の件について、徹底的に緘口令を施かれたことだ。これによって僕には弁明の機会さえ与えられないことになり、あの日S子のコックリさん・・・いや『コクりさん』に付き合った事を心から後悔することとなる。

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