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心霊

匿名奇望さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

何が視える
短編 2026/05/24 18:32 205view

これは私の知人から聞いた、少しばかり質の悪いお話です。

世の中には「視える」人がいますよね。知人の甥御さん、高校生の直樹君(仮称)は幼い頃から、映画『シックス・センス』の主人公のように、ごく当たり前の光景として死者が「視えて」いたそうです。

彼の通学路には、ある一軒の廃屋がありました。かつてそこで凄惨な一家心中があったそうです。父親が自らに火を放ち、家は全焼。道連れにされた妻と幼い息子も、逃げる間もなく焼け死んだといいます。
直樹君がその「異変」に気づいたのは、下校中にその家の前を通り過ぎた時でした。
突然、右足に重みを感じたのです。何かがまとわりつくような、嫌な重さでした。直樹君はすぐに状況を察し、視線を右足に落としました。案の定、足には男の子がしがみついていました。
その家で焼身自殺に巻き込まれて亡くなった幼い子供でしょう。近所にある幼稚園着姿で、足に顔を埋めていました。直樹君は「ああ、憑かれたんだな」と、それほど怖がりもせず状況を受け止めると、意識しないまま再び歩き始めました。直樹君はこれまでの経験から無視をしていれば、悪さをされないと知っていたのです。
帰宅する頃には、いつの間にか男の子は消えていました。

ただ、その日以降、その家の前を通るたびに、男の子が足にしがみついてくるようになりました。通学ルート的にどうしてもその道を通るしかない直樹君は仕方なく、状況を受け入れました。除霊も試みましたが、家の前を通るたびに憑かれるので、諦めてしまい、彼はその「子供」を連れたまま大学生になりました。

大学に入った直樹君に仲のいい友達ができました。
ムードメーカーのA男、少し気の強いB子、そしておっとりしたC子。

ただ、なぜかB子からは、初対面の時から距離を置かれていたそうです。直樹君は「もしかしたら彼女も『視える』側の人で、同族嫌悪をしているのかな」と、ぼんやり察していました。

ある夏の夜のこと。
退屈した4人は、大学近くの廃トンネルへ肝試しに行くことになりました。
そこは昔、女性が惨殺されたという噂のある場所です。早速車を走らせトンネルまで辿りついた4人は、懐中電灯を片手に散策を始めました。
トンネル内はじめじめと湿気が高く、歩くたびに懐中電灯がチカチカと点滅し、明らかに「でる」雰囲気でした。
そして、すぐにその瞬間が訪れます。
パッと懐中電灯の灯りが消え、完全な暗闇になりました。口々に悲鳴を上げパニック状態になった4人でしたが、再び灯りがついた時、更なる恐怖が4人を襲いました。
彼らの目の前に、血の気のない顔をした女が立っていたのです。
「うわああああ!」
4人は脱兎のごとく逃げ出し、転がるように車に乗り込みました。慌ててエンジンをかけた直樹君は全員が乗り込むのを確認するや否や車を発進させ、近くのファミレスへ駆け込みました。

出されたお冷を飲み干し何とか息を整えますが、誰も見たものを信じられず黙り込んでしまいました。幽霊が身近な存在だった直樹君は他の子よりも落ち着いていたので、少しでも場を和ませようと、笑い混じりにこう言いました。
「……びっくりしたけどさ、綺麗な人だったね。モデルさんみたいで」
その瞬間、斜向かいのB子が、椅子がひっくり返るほどの勢いで立ち上がりました。
「……は? あんた、何言ってんの?」
B子の顔は、恐怖より怒りに引き攣っているようでした。
「あんなの、顔なんか分からないくらい、ぐちゃぐちゃに潰れてたじゃない! あんた、本気で言ってるの?!!!」
直樹君は絶句しました。
彼の目には、色白で端正な顔立ちをした女性にしかに映らなかったからです。
B子はそのまま、震える指先で直樹君の足元を指差しました。
「……じゃあ、今もあんたの足にしがみついてる全身ドロドロに焼け爛れたその子供も、あんたには『普通』に見えてるの!!!」

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