「なんで出た」
背後で、すぐ真後ろで、息がした。
受話器の向こうではなく、首筋に。
振り向けなかった。
電話の中の老人が、泣きそうな声で言った。
「そこにいるのは、わしじゃない」
翌朝、店のシャッターは閉まったままだった。俺が帰っていないことを不審に思った家族と警察が店を開けたが、中には誰もいなかったらしい。
ただ、レジ横の電話機の横に、あの大学ノートだけが置かれていた。
最後のページに、新しい文字が一行、増えていたという。
三月二十五日 手伝いの男 電話のうしろ
前のページ
3/3
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 1票

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。