あの夜から、俺は鏡を見るのが怖くなった。
きっかけは、大学の友人Aと行った有名な心霊スポットだ。
本物が出るとか有名な場所だったが、俺たちは当然信じていなかった。
古びたドアを開けると軋んだ音が聞こえた。
俺とAは懐中電灯を手に持ち、探索を始めた。
広いエントランスから見えたのは、左手に二階に上がる階段、そして突き当たりには左右に伸びる廊下。
とりあえず一階を一周しようと話し合った。
突き当たりを左に曲がり、荒れた廊下に沿って進んだ。
廊下の左右にはドアが並び、窓はなかった。
突然、背後で大きな物音がして、振り向くとAがいなかった。
「おい、どうした」
そんな感じで声をかけた。
すると、Aはすぐ近くの部屋から出てきた。
「何かに呼ばれた気がして、部屋に入ったらコケた」
そんな感じのことを言っていた。
怪我もしてないようだったので、気を取り直して進んだ。
中庭を囲むロの字型の建物らしい。
右に四回曲がれば元のエントランスに出るはずだったが、また廊下だった。
ただ、その廊下にはドアはなく、左側の壁一面に大きな鏡があった。
「なにか映るかもな」
そんな風に軽口を叩いて、笑いながら足を踏み出した。
少ししてAが悲鳴をあげた。
振り向くと、Aが鏡を見たまま震えていた。
その視線の先を見ると――Aの姿が映っていなかった。
俺の姿は映っているのに。
「お前誰だよ!」
そんなことを叫んで俺は逃げ出した。
背後から声が聞こえたけど、俺は走って逃げた。
そのまま駅に向かい、始発で実家に帰った。
何度かAからの着信があったが無視した。






















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