『釣りはどうだ?』
そのメッセージに対し、半日後に光からこう返信があった。
『すごいものを見つけた。』
それが、失踪した光からの最後の言葉であった。駿の返信に対し応答はなかった。
言葉通り、その日光は何かを発見したのだ。
そして姿を消した。
この、”すごいもの”が光の失踪に関連しているのではないかーーー
駿はそう考えているのである。
捜査が打ち切られた今でも、駿は定期的にこの山へ訪れ、何か痕跡がないか独自で捜索している。
目当ての渓流沿いも何度も調べたし、沢登りもできる限り行った。
それでも光がどこで失踪したか、皆目見当もつかない現状が続いている。
***
「おいおい、あんた、湯沸けてんで」
駿は遠藤の声で我に帰ると、目の前のクッカーから沸騰した湯が溢れバーナーを伝っていた。
あちち、と呟き慌てて火を止める駿を見つめながら、遠藤は言葉を続ける。
「あんたの気持ちも分かるけどな、あの時警察と青年団総出で捜索したんや。けど、本人はおろか遺留品もなんも見つかってない。こんな事言うのもなんやけども、その、まぁ、なんや。そろそろ潮時言うのかな。あんたもようやってはると思うけどな。」
駿は返す言葉が浮かばず、はぁ、と生返事をしながら伸びてしまったラーメンを無言で啜る。
「まぁ、あんたの気が済むまでやったらええ。知っての通り、ここら一帯は俺が管理してるし、大体毎日見回ってる。何か見つけたら報告するさかい。ーーーただ、いつも言うてるけども、上流にあるフェンス向こうは超えたらあかんで。落石も多いし熊もよう出て危ないからな。」
遠藤は上流の方を指差しそう言うと、よいしょ、と立ち上がった。
「すみません、いつもお邪魔して。」
「ええて。あ、午後から天気が崩れるみたいやからあまり遅くなりすぎんと、ほどほどにな。今日はあまり上に登らん方がええな。まぁ、気つけてや。」
駿はぺこりと頭を下げた。
ーーー遠藤という男は、この山一帯を管理する地元の人間であるが、正確には持主ではないらしい。
河川漁業組合に所属し、時々現れては山の様子を駿に教えてくれる人物である。
光の失踪時にも多大な捜索協力をしていたようだ。
駿は空を仰ぎ、雲がかった太陽を見つめながらラーメンスープを一気に飲み干すと、ザックを背負い上流へと向かった。
***
ヘルメットを装着した駿は、沢登りを繰り返しながら上流へと歩を進めていた。
進めば進むほど、生い茂る木々で緑が濃くなっていく。

























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