それから十年後。
進学を機に実家を出ることになり、荷物を整理していた時です。
クローゼットの奥から、大きな袋が出てきました。
口はガムテープでがっちり留められている。
何が入っているのか思い出せなくて、袋越しに触ってみました。
軽い。
柔らかい。
古い服でも入っているのかな、と思いました。
処分しようと思って鋏を探すはずだったのに。
──本当に無意識でした。
私はその袋を、ぎゅっと抱きしめていました。
理由はわかりません。
ビニール越しに柔らかい感触が腕に収まって。
なぜだか、しっくりきてしまって。
懐かしい、と思ったその瞬間。
袋の中が、もぞりと動きました。
まるで、抱き返すみたいに。
悲鳴を上げて放り投げました。
袋は動きませんでした。
でも自分では触れなくて、母に中身を確かめてもらいました。
中から出てきたのは、白いティディベア。
くまちゃんでした。
「あんた小学生の時、いつも抱いて寝てたじゃない」
母は懐かしそうに笑っていました。
私は、何も言えませんでした。
さっき抱きしめられた感触と、あの夜の記憶が一気によみがえってきたんです。
あの息遣いと、湿った生温かさ。
結局、くまちゃんはゴミに出しました。
供養も考えましたが、とにかく離れたかった。
怒るかもしれない、とも思いました。
でも近くにいるのが嫌で嫌で。
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