当時、僕たちは毎週末になると、近隣の心霊スポットを巡っていました。
そんなことを続けているうちに、近場の心霊スポットはすべて回り尽くしてしまいました。
次に行く場所が見つからなかった僕は、「行くところがなくなったから、今週は心スポ巡りをやめる?」とA子にLINEを送ってみました。
するとA子から「ものすごい穴場を見つけたから、期待して!」と返事が来たんです。
どんな場所なのか楽しみにしながら、その週の仕事を乗り切りました。
週末になり、僕はA子を迎えに行きました。
A子は車に乗り込むなり、「今回行くのはマジでヤバイよー」と、ハードルを上げてきたのを覚えています。
目的地を聞くと、峠を一つ越えたところにある街だと話してくれました。
そしてA子は、これから向かう場所で起きた凄惨な事件の話を始めました。
「昔ね、両親と子どもが2人の、平凡な4人家族が住んでいた家があったんだけど、奥さんが旦那さんの浮気を疑って、精神を病んじゃったんだって。精神が不安定になった奥さんは、子どもがいるから旦那さんは自分を愛してくれなくなったと思い込んで、子どもたちに虐待を始めたらしいの」
僕はA子の話を、黙ったまま聞いていました。
「旦那さんも、日に日に子どもたちの痣や擦り傷がひどくなっていくのを見て、これは虐待だと気づいて、奥さんに離婚を切り出したんだって。奥さんは明日の朝に出ていくと約束して、離婚届も書いたらしいんだけど、その夜に寝ている子供たちをロープで絞殺して、同じく寝ていた旦那さんを刺殺した後、そのロープで首を吊って自殺したんだって」
僕は「えっ!?そんなところに行くの!本当にヤバそうな話じゃん。で、旦那さんは本当に浮気してたの?」とA子に聞きました。
Aこは「浮気していた事実はなかったらしいよ」と答えた。
A子の話に聞き入っていたせいか、気がつくと僕たちは峠を下り始めていました。
僕が「もう少しで着くね」と話しかけると、A子は「なんか変じゃない?」と聞いてきました。「なにが?」と僕が聞くと、A子は「ほら!また」と反対車線の車を指さしました。
僕は何が何だかわからず「わからないよ」と答えると、その車が「パッパッ」とライトでパッシングしてきたんです。
「え?」と思った僕は「この先に動物でも死んでいて、気をつけろって意味かな?」とA子に言いました。でもA子は「たぶん違うよ。峠を降り始めてから、すれ違う車、全部にされているもん」と言いました。
僕は会話に夢中で、まったく気づいていませんでした。
またすれ違う車にパッシングされ、僕らは少しパニックになりました。
すると、さっきすれ違った車がUターンして、サイドミラー越しにこちらへ戻ってくるのが見えたんです。「えっ!?えっ!?」と焦っていると、その車はものすごいスピードで僕たちを追いかけてきました。そして僕たちの車に追いつくと後ろからもパッシングとクラクション。窓を開けて、何か叫んでいます。
僕は「あ!あおり運転だ!」と思い、A子に「窓を閉めて!」と叫びました。するとA子が「これ以上、閉まらないよ!」と言うのです。「こんな時に故障か!」と思いながら、運転席側の窓を閉めましたが、ほんの少し開いたままで、完全には閉まりませんでした。
僕たちがパニックになっていると、後ろの車が無理やり前に出てきて、僕たちの車を停めました。
「終わった」そう思いました。すると前の車から降りてきたおじさんが、「何、危ない事している!!車の上に人を乗せて走って!!」と怒鳴ってきました。僕たちは呆気に取られながらも、「そんな事をしていません!」と答えました。するとおじさんは車の天井部分を指さして「ほら、ここに!」と言い、そのあと「あれ?」と言い不思議な顔をしました。
おじさんは「さっきまで、車の上に女の人がしがみついていたんだ」と言い張ります。
そして「車から落ちたんだ!辺りを探そう!」とまで言い出しました。
僕たちは「2人でドライブしていただけで、他に誰も居ないし、車にも誰もしがみついていない」と心霊スポット巡りの事は伏せて反論しました。何度かそんなやり取りをしてようやく納得したおじさんは「不思議だなー」と言い僕たちに謝ってその場から居なくなりました。
その日は心霊スポットには行かないで帰る事にしました。
帰り道、A子が「あ!」と声を上げました。
「峠を下り始めたときからパッシングされたのって、通り過ぎる車の運転手全員に女の人が見えてたからじゃない?それで教えてくれてたんだよ。それに、窓ガラスが閉まらなかったのも、掴んでいる女の手が挟まってたから、閉まらなかったんじゃないかな…」
























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