もう少しで眠れそうだ、と思ったその瞬間。
腕の中で、空気が動きました。
正確には、息遣い。
「あはは」みたいな笑い声じゃなくて、「くふふ」と息だけで笑うような振動。
──くまちゃんでした。
くまちゃんが、私の胸に顔を埋めて、声もなく笑っている。
怖くて、でも体が動かない。
息がどんどん苦しくなっていく。
くまちゃんが、私を抱きしめ返しているんです。
お腹から腰にかけて、ふわふわの腕が回ってきて。
その腕が、ぎゅっと締め付けてくる。
ぬいぐるみのはずなのに、妙に重たい。
まるで大人の男の腕で締め付けられているみたいな重量感。
胸元の息遣いも、腕の感触も、熱くて、湿っていて。
本当に怖くて。
──とにかく、気持ち悪かった。
脳裏に母の言葉がよみがえりました。
「人形を粗末にすると、人形がやり返しにくるよ」
大事にしていたつもりだったのに。
何か怒らせるようなことをしてしまったのかもしれない。
だから心の中で、ずっと「ごめんなさい」と唱えていました。
次に目を覚ましたときは、朝でした。
全身汗びっしょりで、ひどく疲れていて。
そして、くまちゃんが私の胸の上にうつ伏せで乗っていました。
じっと、こちらを見つめて。
いつもは可愛いと思っていた黒い瞳が、その時はどうしようもなく怖かった。
毛並みは私の汗のせいか、少し湿っていて、それが昨夜の生温かさを思い出させました。
投げ捨てそうになったけど、思いとどまりました。
怖かったけど、捨てたらもっと酷いことになる気がして。
迷った末、使っていなかった袋に詰めて、クローゼットの奥に仕舞い込みました。
























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