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心霊

霙さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

抱き返すもの
短編 2026/02/15 07:38 141view

もう少しで眠れそうだ、と思ったその瞬間。

腕の中で、空気が動きました。

正確には、息遣い。

「あはは」みたいな笑い声じゃなくて、「くふふ」と息だけで笑うような振動。

──くまちゃんでした。

くまちゃんが、私の胸に顔を埋めて、声もなく笑っている。

怖くて、でも体が動かない。
息がどんどん苦しくなっていく。

くまちゃんが、私を抱きしめ返しているんです。

お腹から腰にかけて、ふわふわの腕が回ってきて。

その腕が、ぎゅっと締め付けてくる。

ぬいぐるみのはずなのに、妙に重たい。
まるで大人の男の腕で締め付けられているみたいな重量感。

胸元の息遣いも、腕の感触も、熱くて、湿っていて。

本当に怖くて。

──とにかく、気持ち悪かった。

脳裏に母の言葉がよみがえりました。

「人形を粗末にすると、人形がやり返しにくるよ」

大事にしていたつもりだったのに。
何か怒らせるようなことをしてしまったのかもしれない。

だから心の中で、ずっと「ごめんなさい」と唱えていました。

次に目を覚ましたときは、朝でした。

全身汗びっしょりで、ひどく疲れていて。

そして、くまちゃんが私の胸の上にうつ伏せで乗っていました。
じっと、こちらを見つめて。

いつもは可愛いと思っていた黒い瞳が、その時はどうしようもなく怖かった。

毛並みは私の汗のせいか、少し湿っていて、それが昨夜の生温かさを思い出させました。

投げ捨てそうになったけど、思いとどまりました。

怖かったけど、捨てたらもっと酷いことになる気がして。

迷った末、使っていなかった袋に詰めて、クローゼットの奥に仕舞い込みました。

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