彼らの頭の先、ちょうど室内の最も奥まったところに視線を移した瞬間、私はハッと息を飲んだ。
腰に麻の布切れだけしかまとっていない、異形の者が立っている。
「あそこにおられるのが、白人(しらびと)様じゃ」
男性に言われ改めて見る。
背丈は多分、2メートル以上いや3メートルはあるだろうか。
戦士のようなしっかりとした体躯なのだが肌は透き通るように白く、腕は細く指は異様に長い。
何より目を引いたのは、白人様には頭部がなかった。
代わりにちょうど鎖骨部辺りに顔らしきものがある。
例えていうと魚のエイのような見た目だろうか。
黒目だけの小さな目。
裂けたような邪悪な口の端からは、よだれを垂らしている。
白人様の前には、無数の野菜や果物肉や米などが小山のように盛られており、その中の一個一個を手に取り貪るように喰っていた。
すると土下座している者たちの一人が立ち上がり真っ直ぐ白人様の前まで進むと、銀のお椀に盛った野菜を恭しく捧げる。
「ああしてな月に一度、白人様に供物を捧げるんじゃ」
「どうしてですか?」
男性に私が尋ねると彼はしばらく遠い目をしていたが、やがて口を開く。
「白人様はわしらにとっては救世主のようなものじゃからのう、、、
それはまだあんたが生まれるずっと前のことなんじゃが、ここら辺りがひどい飢饉に見舞われたことがあっての。
そりゃあもう多くの村人が亡くなるほどじゃった。
このままでは村は全滅じゃあと皆で途方に暮れとった頃、この山の中腹辺りが夜になると怪しく白い光を放つようになったらしい。
なんじゃあれはと村人数人で確認に行くと、いつの間にかこの建物があったそうじゃ。
皆で不思議に思っておる頃合いに、白人様が現れた。
白人様は、どこから用意したのか、大量の肉や野菜や果物を村人皆に与えてくれた。
おかげで村は全滅を免れた。
さらに様々な新しい農業の技術まで教えてくれたんじゃ。
おかげで以後村が飢饉に見舞われることはなくなったそうじゃ。
それから村人の中には、白人様を信奉し奉るものが現れるようになった。
彼らは白装束に身を包み、この山のあちこちに居を構え今も生活しておる。




























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