私には悩みがある。
私はXX県の郊外にある築10数年、5階建てアパートの4階に住んでいる。ここに引っ越してきてもう3年が経つ。
悩み…
それは入居した翌日の朝からだ。悩みの種は同じ階に住む80代くらいの男性、名前はCさん。引越し当日に挨拶をして回ったのでよく覚えている。第1印象は愛想のいいおじいさんという感じだった。
新居で迎える初めての朝のこと。
足音と独り言、誰がこんな朝早くに…
ドアスコープを覗くと鬼のような形相をしたCさんが杖をついて歩きながら何やら独り言を言っていた。
それから毎朝である。Cさんは朝の4時くらいになると玄関前の共用廊下を何回も往復する。それで毎朝早い時間に目が覚めてしまう。
実家の両親に相談したら、お寝坊のアンタにはちょうどいい目覚ましだ。そう言われてしまい、相手にもされない。かといって相談できる友達も居ない。
引っ越しについても何度も考えた。ただ、職場に近くて家賃も高くない。こんな好条件の物件は他には無かった。
さて、3日前の事だ。珍しく平日に休みが取れた。休みの日だからといってすることがないため、玄関周りの掃除をしていた。
掃除を始めて10分くらい経った頃、左隣の部屋のドアが開いた。隣に住む主婦のKさんだ。
Kさんは50代くらいの女性で旦那さんと息子さんとの3人暮し。Kさんとは引っ越した当初から仲良くさせて貰っていて、Cさんの朝の足音についても相談済みだ。
どうやら、この階の住人は皆、Cさんの早朝の徘徊を知っている。ただ犯罪行為でも無い為、誰も何も言えないでいるということを引っ越して数日後に教えてもらった。
「若いのに掃除かい?偉いね。私の息子にも見習ってもらいたいものだね」
「いえいえ。仕事休みの日はすることが何も無くて。それにしても今朝も目が覚めちゃいましたよ」
Kさんは怪訝な顔して私に問う。
「あの足音?聞こえないでしょ。だってCさん、先週の木曜日に近所の公園で倒れて救急車で運ばれたんだけど…そのまま亡くなったって…あれ?聞いてない?」
「え?でも今朝も…というか先週もずっと足音と独り言聞こえませんでした?」
「そっか。お兄ちゃん昼間は働いてるから近所で救急車が来たって大騒ぎがあったのもその翌日、親族の人が1軒1軒挨拶に来たのも知らないわよね」
「え?本当ですか?本当に今朝は何も?」
「本当よ!私は早起きだからその時間起きてるけど、先週の金曜日から何も聞こえて来ないよ!きっとお兄ちゃん疲れてんのよ!掃除なんてやめてゆっくり休みな!」
話終えるとKさんは角のエレベーターホールに消えていった。
この会話から1週間が経った今朝も足音と独り言はまだ続いている。
怖くてドアスコープを覗く気にもならない。
ただ、何を言っているのかは聞こえた。
Cさんの声で
「連れてかないでくれ…連れてかないでくれ…」
そう連呼していた。
もう限界だ。



























四十九日が終われば大丈夫なのに。