意味が分からなかった。
聞き返す勇気もなかった。
居間に戻ると、テーブルの上に写真が置かれていた。
さっきまでなかったはずだ。
家族写真。
父、母、子ども二人。
全員、完璧な距離で並んでいる。
肩も触れていないし、離れすぎてもいない。
そして全員、同じミッキーマウスのTシャツを着ていた。
デザインは、男の着ているものと同じ。
色あせ具合まで、似ている。
「昔の写真ですか?」
そう聞くと、男は首を振った。
「最近ですよ。
変わらないだけです」
その言葉で、全部が繋がった気がした。
この家は、変わらない。
汚れない。
老けない。
ずれない。
だから、清めが必要になる。
少しでも“違ってしまった”ものを、揃え直すために。
その夜、俺は家を出た。
理由は説明できない。
男は引き止めなかった。
むしろ、少し残念そうに微笑んで、
「また、どこかで」
と言った。
山道を歩きながら、背中に視線を感じた。
振り返っても、家は見えなかった。
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