玄関の方に行こうとする義父を必死に止めながら私は何度も何度も、違う違うと叫び続けた。
すると玄関の方から、ガチャリというドアの開く音がした。
─え?何で?鍵は掛けたはずなのに……
同時に、どこからかあの不思議な音色が聞こえてくる。
ゴォォォォォ…………ンンンンンン………
ゴォォォォォ……ンンンンンン………ゴォォォォォ……ンンン
しばらくすると、居間のドアがゆっくり開き始めた。
私も義父も、その場で立ち尽くしたまま、ドアの向こう側をただ見ていた。
薄暗い廊下には紫の派手な柄の三角頭巾を羽織り、同じ柄の着物を着た男が合掌しながら立っている。
微かに体全体から淡い光が放たれているようだ
すると義父がまるで磁石に引っ張られるように、ふらふらと男の方に歩きだした。
「ガシュインさまぁぁ……ガシュインさまぁぁ」
私は義父を止めようとするのだが、まるで金縛りにでもあっているかのように全く体が動かず、目の前で起こっている不思議なことをただ眺めているだけだ。
男の体から放たれる白い光はますます強くなり、終いには肉眼では正視できないくらいになっている。
義父はよろよろと歩きながら光の中に進んでいき、とうとう見えなくなってしまった。
次の瞬間辺りは再び暗闇となり、男も義父の姿もなくなっていた。
そしていつの間にか、あの不思議な音色も消えてしまっていた。
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翌朝、義父は、布団の中で冷たい骸になっていた。
ただその顔は、とても安らかなものだった。
【了】

























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