私には小学生の頃からの親友がいます。
小学生の頃は彼と一緒にいない時間の方が少なく、
互いに別々の道を歩んだ今でもたまに通話しながらゲームする、そんな腐れ縁の仲みたいな大切な友人です。
これは、そんな彼と出会って間もない頃の出来事です。
以降、友人をAくんと呼びます。
Aくんと遊ぶ時は、いつも私の家か近所の公園、
あるいは他の子も混ざって遊ぶ時にはその子の家、と言った具合で、
Aくんの家に行くことはほとんどありませんでした。
Aくんも最初のうちは家に誘おうとしてくれていたんですが、
私がやんわりと断るのを繰り返すうちに誘わなくなったのです。
ですが実は、過去にたった一度だけAくんの家に遊びに行ったことがありました。
忘れもしない、小学1年生初めての夏休みの1日目のことです。
校長先生の挨拶を蒸し暑い体育館で聞き流し、Aくんと僕は教室に帰る途中で合流しました。
いつも通りの「今日あそべる?」から私たちの作戦が始まるのです。
その日は、珍しくAくんから切り出しました。
「今日うちで遊ばない?」
いいよ、と言って教室の前でバイバイします。
教室に着いてからも、ソワソワとワクワクが止まりませんでした。
彼の家は、学校近くの団地にある〇〇マンションの×番館にある最上階、10階にあると言うのです。
マンションに住んだことのない私にとって、とにかく「最上階」という響きに豪華なイメージを持っていました。
アサガオの種が植わったプランターを抱え、
体操着、給食着を足で蹴りながら帰宅。
家に着くやいなや荷物を玄関に放り投げ、急いで大好きなトレーディングカードとゲーム機をカバンに詰め込み、元気に飛び出しました。


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。