刹那、身体が浮かび上がるような錯覚に陥りました。フリーフォール型アトラクションで落ちてる時の、内蔵が浮く感覚に近かったです。10数年経ちますが、未だに忘れられない経験の1つです。
身体が浮かび、そして地面に降り立つような感覚があり、すごい目眩がして、何も見えなくなって。
しばらくうずくまっていると、目眩が収まりました。
目を開けて、辺りを見回すと、
そこは、放課後の、薄暗い新校舎でした。
いつもの教室の前の廊下。夕焼け空が普段よりやけに赤く、私の影を細く長く伸ばしていました。
酷く混乱しました。つい数秒前まで、仲間と旧校舎にいたはずです。
それに、空が赤すぎるし、夏なのに、肌を刺す冷たい空気が痛かった。
そこで察したんです。
ここが異世界なのだと。
こういう時、普通はどうすればいいか分からなくなりますよね。ガムシャラに元の世界に戻るすべを探すでしょう。普通なら。でも、私の学校の七不思議は普通じゃない。何故か、私がやるべきことは既に分かっていました。全細胞が知っていました。眠くなったら寝るように、腹が減ったら食べるように、この世界に来たら、こうしなきゃいけないんだって、何故かわかっていたんです。
『放課後に学校に入ってくる生徒を殺せ』ってね。
そうです。放課後徘徊している赤目ってのは、旧校舎から異世界に入り込んでしまった生徒なんです。
私は元の世界に戻るために、自分の為だけに放課後の学校を走り回りました。私の足音は嫌に廊下を反響して、バタバタとうるさい音が響き渡りました。
居ない、誰も居ない。ここにも居ない。
どこだ。誰かしら居るだろう。
さながら獲物を探す猛獣のように、目を血ばらせながら走りました。
そこで、2人の生徒を見つけるんです。
さっきまで旧校舎で一緒だった仲のいい友達二人です。会話を聞くに、旧校舎に忍び込んでから行方が分からなくなっている私を探しているようです。彼らは彼らなりに責任を感じてくれているようで、放課後まで探してくれていたんです。
ええ。好都合でしたよ。
彼らは私の大袈裟に大きい足音と、恐らく私の姿を見て、これまた大袈裟な叫び声を上げ、一目散に走っていきました。君らが探している私はここにいるのに。
しかし何故でしょうね。普段の私は彼らよりもずっと足が遅いのに、あの時は尋常ならざる速度で彼らに追いつき、その身を引き裂き、肉を抉り、屠りました。
私の高笑いが廊下中にひびき渡ったかと思うと、先程の浮遊感がやってきて、次に地面に降り立つ感覚を味わう頃には、私は昼の旧校舎に居ました。
1人で。
それから、一緒に旧校舎に忍び込んだ友達二人は消えました。文字通りです。存在ごと、この世に初めからいなかったみたいに、居なくなったんです。
不思議と、そりゃ仕方ないなって思えました。何故でしょうね。彼らと過ごした6年間、遊んで笑いあって、喧嘩して泣いた日々を、私は今でも鮮明に覚えているのに、特に悲しくもなかったです。
























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