写真の女の子
投稿者:ぞざい (8)
「なあ……助けてくれよ……」
ひどく怯えた声だった。心配になった私がどうしたと聞くと、
「もう、あの、写真の、女の子、こっち、向きかけ、なんだ、目が、合いそうな、くらい、さっき、見たんだけど、なんか、すげえ、怖いんだよ……………」
途切れ途切れの声。只事ではない。本当なら今すぐにでも友人のそばに行きたいくらいだったが、それはできない。
とりあえず、明るい話をして友人の気持ちを楽にさせようとした。友人も最初は怯えていたが、それもだんだんと収まり、「こんな時は酒を飲んだほうがいい」とどうやら酒を飲み始めたようだ。
「ごめんな、こんな時間に。お前のおかげで少し楽になったよ。」
酔っ払ってきたらしい。ちゃらけた声で友人はこう言った後に、
「おやすみ、ありがとう。」
と。そのありがとうは、普通の感謝の言葉では無く、いま思えばかなり重たいものだった。
次の日の朝、私は妙な胸騒ぎがして、友人に電話をかけた。しかし、何度かけても繋がらない。昼頃になって、友人宅の固定電話から着信があった。電話をかけて来たのは友人の母だった。
友人が亡くなった、と告げられた。
実家暮らしの友人だった。朝、友人が死んでいるのを発見したそうだ。今、警察に調査してもらっていると、お通夜とお葬式に来られそうであれば来てくれと、要点だけを述べて、友人の母親は電話を切った。
私は涙が止まらなかった。どうして、昨晩、あの電話を切ってしまったのか。ずっと、ずっと話していれば友人は死なずに済んだかもしれない。
後日、友人の葬式に出席した私は、葬式がひと段落したタイミングで、友人の母親と話す機会を持てた。
「○○(友人の名前)ね、警察の人は事故死ってことにしたけど、私はそんな気がしないの」
友人の母親はそう言った。そしてこう続けた。
「なんかね、あの子ここ最近おかしかったの。こう、何かに取り憑かれてる感じがするっていうか。自分の意思で死んだって感じがしなくて」
私はその通りだと相槌を打ちながら、写真の話をしようか迷ったが、このような場でする話ではないと思い、やめた。
そして聞いた。
「○○はどのような状況で亡くなっていたのですか?」
聞かなくてはならない、気がした。
「お風呂場でね、溺死。服も着たままだったの」
私は嫌な予感がした。さらに友人の母親は続けた。
「お風呂にね、紙が浮いてて。写真みたいな紙なんだけど、しわくちゃになってて何が写っているのか分からなかったわ」
嗚呼。
友人を風呂場に連れて行ったのはあの写真の女の子、いや女の子ではなく、死神だと、今も私は確信している。
面白かった
面白いと言うかこわい話ですね。
今月は1位と2位が奇しくも「女の子」 「写真」 「友人の死」と言うキーワードが共通してますが、ここまで味の違う話になるのが興味深いです。
オーソドックスではあるけど文章になかなか味わいがあって楽しめました
すごい
どこかで聞いたようなありきたりで予想通りの展開。
なんだが、なぜこんなに怖く面白いんだ?すごいな。語り口ひとつでこうも味わいが変わるものなのか。
自撮りやめよう…
怖
女の子同士の話かと思っていたら、違ってた。
オチ直前までが怖い話
オチは怖くないのがありがち