輪の中心が、俺の立っている場所に“合っていた”のだ。
夜になってホテルに戻り、取材メモを整理していた。
念のために録音しておいた音声を再生する。
工事音、風の音、足音。
そして——
かすかに混じる、別の声。
子どもの声だった。
小山の、声。
──わたしたちは ここに かえす。
ぞっとして再生を止めた。
だが次の瞬間、スマホの画面が真っ白に光った。
何かが画面に浮かび上がった。
白い、円。
眠れなかった。
翌朝、現場にもう一度行くつもりだった。
だが、メモ帳に書いた地図を見返しても、
〈黒澤第一小学校〉という地名が、どこにもない。
統合校の名前は出てくるのに、
黒澤第一という記述だけ、どの資料からも消えていた。
まるで——
最初から、そんな学校は存在しなかったかのように。
俺は、それでも信じたい。
白い線は確かに存在した。
小山も、確かに隣にいた。
だが、あの録音の中で、最後にもう一言、聞こえたのだ。
俺の声に重なるようにして——
「——次は、あなたが、かえす番」
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