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妖怪・風習・伝奇

kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山で遭難して出会った木こりの話
長編 2025/11/06 23:01 23,208view
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亮介が小声で俺の腕をつついた。
「なぁ……ちょっと見に行こうぜ。」

「は?」
思わず声が漏れそうになる。

「だってよ、気になんだろ? あの人、何作ってんのか。」
ニヤッと笑うその顔は、まるでガキの頃のままだった。
俺は止めようとしたが、結局、好奇心に負けて立ち上がっていた。

ギィ……と床板が軋む音を殺しながら、二人でそっと廊下に出る。
暗闇の中、奥の台所の方からは淡い灯りが漏れていた。
それと同時に――“キィ……キィ……”と、金属を擦る音が響く。

覗き込んだ瞬間、息が止まった。

男は、背中をこちらに向けて、何かを研いでいた。
鈍く光る刃――あの斧だった。
刃先には乾ききらない赤黒い汚れがこびりついている。

「……なんまいだ……なんまいだ……」

低く、湿った声で、何度も同じ言葉を繰り返している。
その横のまな板の上には、何かの“肉片”が散らばっていた。
血のような液体が滴り、床に赤い点を作っている。

やがて、男は研ぎ終えた斧を横に置くと、
今度はボウルに入った“何か”を素手で掴み、無造作に潰し始めた。

ぐちゃっ……ぐちゃっ……

その音が、俺たちの鼓膜を直接殴るように響く。
やがてそれを丸め、掌の上で団子のように転がした。

「……これでいい、これで……」

笑っている。
だが、その笑みは人間のものではなかった。

俺たちは、息を飲む音すら出せなかった。
背筋を冷たい汗が伝う。
“ぐちゃっ、ぐちゃっ”という湿った音が、まだ耳の奥にこびりついて離れない。

亮介が俺の袖を掴んだ。
顔は真っ青で、唇がわなわなと震えている。
「……やばい、やばいって……あれ、絶対普通じゃねぇ……」

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