トタン屋根は錆びつき、壁には苔が生えていた。
雨ざらしのまま何年も放置されていたような見た目で、木の壁はところどころ黒ずみ、隙間から中の明かりがうっすら漏れている。
それでも、確かに人の住んでいる気配はあった。
窓際には干からびた薬草のようなものが吊るされ、入口の横には薪が乱雑に積まれている。
ドアノブは古びた鉄製で、握るたびに軋みそうなほど錆びついていた。
「ここが……俺の小屋だ」
男はそう言うと、無骨な手で扉を押し開けた。
中から、煙のような匂いと獣臭が入り混じった空気が流れ出てきた。
部屋の中央には木製のテーブル、脇には石造りの暖炉があり、炎がゆらゆらと揺れていた。
壁際には大小さまざまな斧やのこぎり、狩猟用の罠のようなものが掛けられている。
そのどれもが使い込まれ、刃の部分には乾いた赤黒いシミがこびりついていた。
亮介が小さく囁く。
「……なんか、ホラー映画みたいだな。」
俺は苦笑いを浮かべたが、笑えたのはほんの数秒だった。
暖炉の火に照らされた男の横顔が、なぜかやけに無表情に見えたのだ。
男は俺たちを奥の部屋へ案内した。
「ここで待ってな。ちょっとしたもん、台所で作ってやっから。」
そう言って、ギィ……と音を立てながら扉を開ける。
中は六畳ほどの狭い空間で、古い布団と小さな机があるだけだった。
壁には木材の隙間がいくつもあり、外の冷気がすうっと入り込んでくる。
床板はところどころ沈み、歩くたびに“ミシッ”と音を立てた。
「すぐ戻っから、勝手に動き回んなよ。」
男はそう言い残し、台所の方へ行った。
ドアが閉まると、急に静かになった。
外では風が木々を揺らし、遠くでフクロウが鳴く声がする。
亮介がベッドの縁に腰を下ろし、ため息まじりに言った。
「……なぁ、あの人、マジで木こりなのか?」
俺は曖昧に笑うしかなかった。
どこか落ち着かない。
あの斧、そしてあの顔。思い出すたび、胸の奥がざわつく。
























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