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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山で遭難して出会った木こりの話
長編 2025/11/06 23:01 23,179view
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トタン屋根は錆びつき、壁には苔が生えていた。
雨ざらしのまま何年も放置されていたような見た目で、木の壁はところどころ黒ずみ、隙間から中の明かりがうっすら漏れている。
それでも、確かに人の住んでいる気配はあった。

窓際には干からびた薬草のようなものが吊るされ、入口の横には薪が乱雑に積まれている。
ドアノブは古びた鉄製で、握るたびに軋みそうなほど錆びついていた。

「ここが……俺の小屋だ」
男はそう言うと、無骨な手で扉を押し開けた。

中から、煙のような匂いと獣臭が入り混じった空気が流れ出てきた。
部屋の中央には木製のテーブル、脇には石造りの暖炉があり、炎がゆらゆらと揺れていた。
壁際には大小さまざまな斧やのこぎり、狩猟用の罠のようなものが掛けられている。

そのどれもが使い込まれ、刃の部分には乾いた赤黒いシミがこびりついていた。

亮介が小さく囁く。
「……なんか、ホラー映画みたいだな。」

俺は苦笑いを浮かべたが、笑えたのはほんの数秒だった。
暖炉の火に照らされた男の横顔が、なぜかやけに無表情に見えたのだ。

男は俺たちを奥の部屋へ案内した。
「ここで待ってな。ちょっとしたもん、台所で作ってやっから。」

そう言って、ギィ……と音を立てながら扉を開ける。
中は六畳ほどの狭い空間で、古い布団と小さな机があるだけだった。
壁には木材の隙間がいくつもあり、外の冷気がすうっと入り込んでくる。

床板はところどころ沈み、歩くたびに“ミシッ”と音を立てた。

「すぐ戻っから、勝手に動き回んなよ。」
男はそう言い残し、台所の方へ行った。

ドアが閉まると、急に静かになった。
外では風が木々を揺らし、遠くでフクロウが鳴く声がする。

亮介がベッドの縁に腰を下ろし、ため息まじりに言った。
「……なぁ、あの人、マジで木こりなのか?」

俺は曖昧に笑うしかなかった。
どこか落ち着かない。
あの斧、そしてあの顔。思い出すたび、胸の奥がざわつく。

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