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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山で遭難して出会った木こりの話
長編 2025/11/06 23:01 23,272view
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逃げるわけにもいかない。
疑われるわけにもいかない。

俺は箸を手に取り、ひとつ、肉団子を口に運んだ。

──柔らかい。
けれど、妙に……鉄の味がする。

舌の上に残る生温い金属の風味。

亮介も、無言で一口だけ食べた。
二人して、ただ“飲み込むこと”しかできなかった。

食事を終えるころには、部屋の中に沈黙が満ちていた。
皿の上には、もう何も残っていない。

だけど──胸の奥は、重く沈んだままだった。

亮介がちらりと俺を見る。
その目には、もう“好奇心”の火はなかった。
あるのはただ、“ここから出たい”という焦りだけ。

「……ごちそうさまでした。すごく美味しかったです」
亮介が、わざと明るく言う。
俺もぎこちなく頭を下げた。

「そろそろ、下山しようかと思って……夜も遅いですけど、ライトもありますし」

そう言って席を立とうとした、その瞬間。

「――待て」

男の低い声が、背中を刺すように響いた。
ゆっくりと立ち上がるその動作。
笑っているのに、目が笑っていない。

「こんな夜に山を降りるなんて、無茶だべ」
男はそう言いながら、腰の辺りに手をやった。

そして、服の下から“それ”を引き抜く。

重そうな鉄の音。
鈍く光る刃。

──斧。

さらに、刃を覆っていた革のカバーを、ゆっくりと外した。
“ギィ……”と擦れるような音が、やけに長く響く。

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