懐中電灯の光を下に向ける。
その光が照らし出したのは――
真っ赤に染まった床。
乾きかけた血が層をなし、ところどころに黒ずんだ塊がこびりついている。
まるで“そこに何かが解体されていた”ような、そんな跡だった。
「……これ……やばくねぇか?」
亮介の声が震えていた。
俺は喉が張りつくような感覚に襲われ、ただ小さく頷くことしかできなかった。
そのとき、俺も亮介も同じ考えをしたのだろう。
“見てはいけないものを見た”。
言葉なんていらなかった。
互いに顔を見合わせただけで、息を呑む音さえも飲み込んだ。
俺はすぐに扉を閉め、震える手で木の取っ手を押さえつける。
ギィ……と、また鈍い音を立てて地下への入口が閉ざされた。
亮介が慌てて、さっき剥ぎ取った鹿の皮を戻す。
赤黒い染みが滲んだその皮を、まるで罪を隠すように丁寧に敷き詰めた。
心臓の音がやけに大きく響く。
「……見なかったことに、しよう」
俺が小さく呟くと、亮介は力なく頷いた。
何とか平静を装いながら、俺たちは客室へ戻った。
胸の奥では、まだあの“真っ赤な地下”の光景が焼きついて離れない。
だが、部屋に戻ると──
テーブルの上には、いつの間にか夕食が並べられていた。
皿の上には香ばしく焼けた肉団子が山盛りになっている。
焦げ目がついていて、湯気の向こうに独特の匂いが漂う。
「鹿の肉だよ」
いつの間にか、台所にいたはずの男が客室にいた。
にやりと笑いながら、皿を俺たちの前に置いた。
「山で獲れたばかりでね、少し癖があるが……旨いよ」
亮介と目が合う。
互いに何も言えず、無理やり口角を引きつらせた。

























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