そして、美緒は、うなされながら、あの歌を歌い始めた。
「あーかい、あーかい、おうちー」
「なーにで、ぬるーのー」
僕は、美緒の歌声を聞いて、恐怖に震えた。
美緒も、あの歌に囚われ始めてしまったのだ。
その時、僕の携帯電話が鳴った。
表示された番号は、ケンジの携帯電話番号だった。
僕は、震える手で電話に出た。
「健人…俺だ…」
聞こえてきたのは、微かに弱々しい、ケンジの声だった。
「美緒を…赤い家へ…連れてきてくれ…」
ケンジは、そう言うと、電話を切った。
僕は、美緒を連れて、赤い家へ向かうことを決意した。美緒を救うには、あの家で、あの歌の呪いを断ち切るしかないと思った。
第六章:儀式の場所へ
赤い家の中は、以前よりもさらに不気味だった。空気が重く、冷たく感じられた。壁には、美緒が描いたと思われる、奇妙な落書きが描かれていた。それらは、まるで呪いの歌を視覚化したかのような、歪んだ絵だった。
奥の部屋に行くと、そこには、蝋燭の光に照らされたケンジが立っていた。彼の目は虚ろで、まるで何かに操られているかのようだった。彼の周りには、集落の古い資料や、呪術に使われたと思われる道具が置かれていた。
「健人…美緒を…ここに置いていけ…」
ケンジは、僕にそう言った。その声は、ケンジ自身の声でありながら、どこか別の誰かの声が混じっているように聞こえた。
僕は、美緒をケンジに渡そうとした。しかし、その時、僕は、部屋の中央に置かれた石碑に気づいた。石碑には、古文書に記されていた呪いの歌の楽譜が刻まれていた。そして、その楽譜の中心には、赤い染みがついていた。
僕は、ケンジが、呪術師の魂に操られ、再びあの歌を完成させようとしていることを悟った。そして、美緒は、その儀式に必要な存在なのかもしれない。
最終章:呪いの解放
僕は、ケンジから美緒を奪い返した。
「ケンジ!目を覚ませ!それはケンジじゃない!」
僕は、ケンジに向かって叫んだ。
しかし、ケンジは僕の言葉に耳を貸さず、僕に向かって、あの呪いの歌を歌い始めた。歌声は、部屋全体に響き渡り、僕の心を掻き乱した。
僕は、ケンジの歌声に抗いながら、美緒を抱きしめた。そして、僕は、石碑に刻まれた楽譜の中央にある赤い染みに触れた。それは、乾いた血の染みだった。
僕が染みに触れた瞬間、赤い家全体が、激しく揺れ始めた。壁に描かれていた落書きが、音を立てて剥がれ落ちていく。そして、家全体を覆っていた赤い色が、まるで生きているかのように蠢き、やがて消え失せた。
僕たちの目の前には、煤けた古い家が現れた。かつての「贄の家」ではなく、ただの寂れた屋敷だった。
そして、ケンジは、歌うのを止め、ゆっくりと倒れた。彼の顔から虚ろな表情が消え、安らかな顔つきになった。
僕は、ケンジを抱き起こした。

























初めて長編出来た。大変なんだよ。