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ヒトコワ

真代さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

忘れられないよ
短編 2025/10/01 03:25 20,396view
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しかしまだまだ悪夢はエスカレートしていく。
夜道を歩くのが怖くなり、結局電車で帰るようになっても、週に何度も追いかけられた。
次第に、先回りされるようになっていった。
駅の改札口。
駅を出てすぐの所。
曲がり角の先。
いつも走って迂回する路地裏の出口。
アパートからいちばん近いコンビニの前。
いつも暗がりの中ニコニコこっちを見て、
『俺の事忘れんなよ』
とか言ってきて、その度に走って逃げた。

『おーい、おーい、待ってくれよ』って、その度に追いかけてきた。
気がつくと男が出没する地点がどんどん家に近づいてきていた。もう、家がバレるのも時間の問題だった。それを考える度、恐怖で頭がいっぱいになって、どうやって死のうか、そればっかり考えるようになっていった。

でも、ある日を境にぱったりと夜道に男が現れなくなって、もしかして、諦めてくれたのかな。なんて、楽観的だった。

あの日までは。

*

*

*

あの日、玄関開けたら、あの男が居た。
部屋の真ん中に突っ立ってた。
こっちをゆっくり振り返って、ニッ、と笑った。
何か喋ろうと男が口を開いた瞬間、自分でも驚くほど情けない声で叫んで、走って逃げて、警察に通報した。

でも警察と私が部屋に戻った頃には男は居なくて、
警察はまともに取り合ってくれなかった。
ちゃんと施錠して、何かあったら連絡して。とだけ。

家賃2万8千円のボロアパートの鍵はあまりにも頼りない。

引っ越そうにも、お金が無い。
鍵を変える余裕も無い。

むしろ、部屋まで入れるんだから、サクッと殺してくれればいいのにって、本気で思った。
恐怖と理不尽で頭がおかしくなりそうだったから。
実際、あの男と遭遇すると、ストレスのせいかひどい頭痛がするんだ。
私はただ、懸命に生きてきただけだ。
なんで、こんなことになるんだろう。って、何度も考えて、何度も何度もリスカした。
やっぱり死ねなかった。

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