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心霊

大鷹恵さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

社員寮であった恐怖体験談
長編 2025/09/28 21:42 1,084view

これは昔、私が島根県にある水産加工会社の社員寮にて体験した話である。私の趣味仲間にニコラウス・ヴェンドリンガーという方が居た。ヴェンドリンガーには結婚を約束している恋人、イチー・イッチマンが水産加工会社に勤務しているのだ。彼女は中学卒業後、毒親と姉から逃れるため、島根県にある水産加工会社に就職したという。なお、この水産加工会社は加工食品を製造をするだけでなく、漁業、水産養殖もおこなっている優良企業の一つだ。当時の水産加工会社は従業員の給料(後、ボーナスもな)と福利厚生が良いくらい景気が良かったのだ。ところが他の従業員はともかく、イッチマンの給料だけは激安(時給100円とのこと)の上にサビ残、土日出勤当たり前のブラック労働を強いられている状態であった。イッチマンの給料では社員寮の料金、両親への仕送り、食費で一か月の給料が飛んでしまう事も多々あった。なお、昭和20年代前半に建築された社員寮は老朽化が進んでおり、寮に入所しているのはイッチマンだけである(従業員の大半は新築のアパートやマンション、一軒家を購入して住んでいた)。後、部屋は暖房冷房無しのワンルームであり、社員寮での食事は食堂(調理器具やレンジやガスコンロは故障していて使えないものばかりだという)でとることが決まっており、風呂とトイレ(汲み取り式)は共同であった。その上、社員寮は地元でも有名な心霊スポットというとこで地元のDQNたちが平気でドカドカ上がり込んでくることが多発しているのだ(あまつさえ、社員寮の備品を壊しまくるのだ。なお、会社は彼らの行為を見て見ぬふりしている)。ヴェンドリンガーは
「実はな、彼女から電話で連絡があって、彼女の部屋に黒い男たちがわんさか現れるんだよ。イッチマン曰く
「あれは人間じゃない幽霊」
と言っているんだ。元々、あの社員寮には心霊スポットとして有名で前述の黒い男だけでなく、二階のある部屋で深夜になると「一段」と言う声が聞こえるんだ。次の日には「二段」と謎の声が聞こえるんだよ。つまり、階段を数えている声なんだよ。毎晩「三段」「四段」「五段」と声が聞こえてくるんだ。そして、12日目になると
「十二段・・・明日、十三段目の階段だ。明日、この部屋に入れるわ、デュフフフ」
という声が聞こえてくるんだ。そして、2日後、部屋には不法入居していたホームレスが首を括って死んでいたなんて話もある」
と笑いながら言った。
「なるほど、それは興味がありますね」
「それなら善は急げだ、明日、イッチマンに会いに行くんだ。それに俺は彼女に・・・」
「結婚のプロポーズですか?」
「ああ」
ヴェンドリンガーはニヤリと笑う。その夜、勤務を終えた私は自宅にてテレビで放送されているジャン・ロシュフォール主演のクライムコメディ映画「めぐり逢ったが運のつき」を横目で見ながら、フジテレビのホラードラマ「ほんとにあった怖い話」に投稿する為、実際にあった怖い話を書いていた。

これは私が少女漫画雑誌の編集部でアルバイトしている女学生から聞いた話である。それは編集部に期限が切れた応募はがきが送られたことから怪異が始まった。編集長は送り主の少女に葉書を送った所、葉書が来た、その葉書には送り主の少女はすでに死んでいると書かれてあったのだ。顔面蒼白した編集長は女学生に送り主の家まで行って読者プレゼントを渡すように指示する。なお、送り主の少女は死んでおらず、編集部を困らせるため、こーゆー行為を行ったのである。さて女学生はそんな事情がある事も知らず、ほくそ笑みながら送り主の少女が住んでいる家まで向かう。なぜなら、女学生は数年前に雪山で死んでいたからだ(そう、アルバイトの女学生は幽霊だったのである!後、レズビアンでもある)。女学生の幽霊は送り主の少女を雪山に連れて行こうとしているのだ。なんせ、レズビアンだしね。私は怪談を書き終えると「ほんとにあった怖い話」のホームページに投稿した。後は番組に採用されるかどうかを待つだけである。私は明日の準備を終えると、布団に入り横になる。

次の日、私は自宅近くのバス停で待っていると、ヴェンドリンガーは愛車のジャガーXJーSのコンバーチブルが停車した。私はジャガーに乗り込むと、島根県の水産加工会社の社員寮の方に向かった、
「今日彼女を両親に合わせるんだ」

「へぇ、まだ両親には教えていないんですか?」
「ああ。両親も驚くだろうよ。でも俺の両親ならイッチマンを受け入れてくれるさ、はははッ」
ヴェンドリンガーは笑いながら、ハンドルを握る。
「あまりスピードを飛ばさないでくださいよ」
「分かっている、分かっている」
ジャガーは彼女の住む社員寮に到着した。私とヴェンドリンガーは彼女の部屋に入る。私は部屋の中から何か異臭がすると思った。私はある所から視線を感じた。隣の部屋のドアからであった。私は隣室のドアの方を見ると、男の子が二人立っていた。
「ここはやめておいた方がいいな」
私は直感でこの社員寮はヤバいと感じた。彼女の部屋のドアが開く。イッチマンであった。私たちは部屋の中に入る。部屋の中は異臭で吐きそうになる。私は部屋中を見回す。何もなかった。窓を見た。
「!」
そこには老婆が窓に張り付いていたのだ!私は後ずさりする。老婆はニヤニヤと笑う。ヴェンドリンガーとイッチマンは老婆の存在に気が付いていないようであった。私は
「気分が悪いんから、外で一服してきます」
といって外に出る。社員寮は異臭で充満していた。私はハンカチで口をふさぎながら、外の方へと向かう。二階から
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
と女性の悲鳴が聞こえる。恐らく、幽霊の仕業であろう。ふと、共同トイレの方まできた。共同トイレの中から
「髪をくれ、髪をくれ。私に髪をくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

と男性の声が聞こえる。
「ここの従業員にカツラでも買ってもらいなよ」
私はそう呟きながら、共同トイレの近くを後にする。やっと外に出れた私はカバンからのマイケル・バー=ゾウハーのスパイ小説「パンドラ抹殺文書」を取り出して読み始める。私が「パンドラ抹殺文書」を読み終える頃、
「まだあの二人は会話しているだろうか?」
とイッチマンの部屋に戻ろうとしていた。その時、ランドローバー・ディスカバリー(初代)とフォード・シエラの5ドアハッチバックが駐車場に停車した。男たちがゾロゾロと現れる。男たちの手には長ドスや金属バッドが握られていた。男たちはドスドスと社員寮の方へと向かっていく。不味い!あいつら、イッチマンたちを殺るつもりだ!私は急いで、イッチマンの部屋に戻る。
「大変です!凶器を持った男たちがこっちに向かってきています」
ヴェンドリンガーは
「ああ、親父たちが来たんだな」
とニヤリと笑う。部屋に男たちが上がり込んできた。
「親父、この女が親父の盆栽を壊した専業主婦の娘なんよ。後、大鷹はこの件とは無関係だから見逃してやってくれ」
ヴェンドリンガーの父親は息子の行動を知って、笑う。
「へへへ、でかしたぞ。流石、俺の息子だぜ。おい、そこの若いの、お前は何も見なかったんだ。いいな?」
父親は私を威嚇する。私はうなずくしかなかった。そして、男たちはカバンの中から「ある物」を放り投げる。
「!」
それはイッチマンの毒親の生首であった。イッチマンは悲鳴を上げる。
「蛙の子は蛙、蛙如きに情無用!やれ!」
ヴェンドリンガーは指をパチンとする。それを合図に男たちはイッチマンに襲い掛かる。社員寮からイッチマンの悲鳴が聞こえた。

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