私は、
『彼』を、
全身に、
浴びた。
ひゅうと息を飲む。
同時に海水を飲み込んでしまう。
腐った『彼』の身体が溶け出した、その海水を。
呆然とする私の腕の上で、一匹の蟹がカサカサと笑っていた。
…
…
あれから数年が経った。
私はあの時の勇気を今でも忘れない。
死ぬほど後悔している。
漏らした吐息には腐臭が混じる。
今でも私の指先からは腐った肉の臭いが消えない。
…消えてくれない。
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