鍋の中には、雑に大きめに切られた猪の肉と、何か草のようなものが混ざっていた。
匂いは、山の匂いというよりもどこか生々しく、俺の胃袋が思わずぎゅっと縮んだ。
シバは鍋を囲炉裏の上の紐に吊るし、ぐらぐらと揺れる火の光に反射する肉を見ながら、楽しそうに微笑む。
ニヤマも鍋を支えながら黙々と火の近くまで運んでいった。
囲炉裏の火で鍋がグツグツと煮えると、ニヤマがオタマを手に取り、土でできた皿を差し出した。
鍋から猪の肉や草を大きくすくい取り、皿に盛る。その皿を、シバが手早く兄弟たちに配っていく。
俺も差し出された皿を手に取り、そっと箸をつけた。
イチダは、力の抜けた手を伸ばし、皿にある肉を手づかみで取り、口へ運ぶ。
その動きは丁寧に見えるのに、肉を噛むたびに、妙に不自然で濁った音が響いた。
息を吐くたび、器官からかすかに鳴るような、異様な咀嚼音が耳に残る。
対照的に、ニヤマは大きな手で具材を豪快につかみ、仮面の下に押し込むように口へ運ぶ。
咀嚼する音はまるで誇示するかのように大きく、囲炉裏の火のパチパチという音をかき消すほどだった。
ミヨシは、箸を使わず土下座のようにしゃがみ込み、顔を伏せて具材を口に押し込む。
まるで自分の存在を隠すかのように、犬のように食べている。
その姿は異様で、視線を逸らさずにはいられなかった。
シバだけは普通に箸を使い、静かに食事をしている。
だが仮面は外さず、口元の奥で食べ物を運ぶ様子は、どこか子供のように無邪気であり、同時に不気味でもあった。
俺は箸を握ったまま、息を整え、食事する。あの時の味は覚えていない。何も味がしなかったような気がする。やがて食事が終わると、シバが静かに立ち上がり、俺に向かって言った。
「さあ、おじさん、こっちだよ。寝る部屋はこっち」
彼について行くと、家の奥の方に小さな扉があった。開けると、中は客用の部屋らしく、普段はあまり使われていないようだった。
部屋に足を踏み入れると、埃っぽい匂いが鼻を突き、空気が重い。
床や畳の上には厚い埃が積もり、触れたものはすぐに薄く白い粉を巻き上げる。
窓から差し込む光は薄暗く、障子の紙は部分的に破れて、風が通るたびにかすかに紙が揺れる。
古い布団や座布団が乱雑に置かれ、壁に掛かる絵や掛け軸も色あせ、ほこりをまとっている。
「ここでゆっくり休んでね」
シバは面越しに微笑み、ふわりと布団の近くに立った。
その無邪気な様子と、埃まみれで古びた部屋の雰囲気が、妙に奇妙なコントラストを作っていた。
俺はため息をつき、布団に体を沈める。
この山の奥深くで、こんな夜を過ごす
この山の奥深くで、こんな夜を過ごすことになるとは、思いもしなかった。
























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