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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山の中で出会った兄弟の話
長編 2025/09/23 19:53 29,497view
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布団に横になったものの、慣れない環境のせいか、まったく眠れなかった。
仕方なく、気晴らしに外の空気でも吸おうと布団から抜け出す。

そのとき

「あああああああ!!」

山鳴りのように低く、しかし鋭く、異様に長い叫び声が、家の奥から聞こえてきた。
耳を押さえながら、声のする方へ向かうと、そこには四つの小さな部屋が並んでいた。
扉にはそれぞれ、「イチダ」「ニヤマ」「ミヨシ」「シバ」と書かれており、どうやら兄弟たちの個人の部屋らしい。

恐る恐る、俺はこっそり扉を開け、一人一人覗き込んだ。

まず、天狗面のイチダ。
何もない空間に手を伸ばし、顔を左右に傾けながら、まるで何かを崇めるかのように動いている。

よく耳を澄ますと、かすかに小声が聞こえる。
……だが、それが何を言っているのかは理解できなかった。

次に、鬼面のニヤマ。
手に何かを握り、力任せに振り回している。
振り回すたびに壁にぶつかり、木の柱や板に大きな傷やヒビを刻む。
その巨体が暴れるたび、床や天井も微かに揺れる。

小柄な翁面のミヨシは、部屋の隅で頭を抱え、声を上げて「あああああ!!」と叫びながら震えている。
尋常ではない震え方で、まるで何か目に見えない存在に怯えているようだった。

そして、ひょっとこの面のシバの部屋には、人の気配がなかった。

俺の体は硬直し、息も止まりそうになる。

突然、後ろから肩を掴まれ、思わず声を上げそうになる。
振り返ると、そこにはひょっとこの面をつけたシバが立っていた。

「おじさん、何してるの?」

その無邪気な声に、恐怖で硬直していた体が少し緩む。
しかし、目の前の兄弟たちの異常な行動を思い出すと、自然と口をついて質問が出た。

「……あの、兄さんたちは……一体、何をしているんですか?」

シバは少し首をかしげ、口元の仮面の下で微笑むような動きを見せた。

「あ〜……夜になると、兄さんたちはいつも変な行動をするの。
聞いても……わかんないかな」

声には子供のような弾みがあり、まるで怖がる俺を安心させるために言っているようでもあった。
だが、その言葉の向こうには、説明しきれない異様さと、夜ごとの奇怪な習性の影が見え隠れしている。

5/8
コメント(1)
  • 読みやすくてめっちゃ好き 話の内容が入ってきやすい

    2025/09/25/09:24

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