「もう、やだ……出して……」
メッセージはそこで途切れた。
その話を聞いて、俺はぞっとした。
つまり、もしまた新しいメッセージが入っていたら、彼女はさらにひどい目に遭っているということになる。
その声は、メッセージ越しではなく、まるで部屋のどこかから、直接俺に話しかけているかのようだった。
俺は周りを見回すが、誰もいない。
「聞こえてるんでしょ?」
電話の向こうで、先ほどよりもさらに激しい音と、何かが「パキッ」と折れるような音がした。
そして、微かに、彼女が最後に囁く声が聞こえた。
「次は……あなたの番」
次の瞬間、背後から、携帯電話の着信音が鳴った。
表示されているのは、自分の携帯電話番号。
俺は恐る恐る受話器を耳に当てる。
電話の向こうからは、無音。
それは、まさしく俺自身の声だった。
その声は震えていて、まるで誰かに助けを求めているかのようだった。
そして、その声に被せるように、また別の声が聞こえてきた。
女性の声だ。
「聞こえてるんでしょ?」
そして、俺は彼女と同じように、その留守番電話に録音されるのだ。
そして、次の誰かに、このメッセージが届くのだ。
俺は、まだ、壁を引っ掻く音が、どこかで聞こえる気がする。
いや、違う。
それは、俺が、今、壁を引っ掻いている音だ。
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