それは、いつもの帰宅路でのことだった。夜の帳が降りた住宅街。街灯の切れ目に差し掛かったとき、ぼくは道の向こうから歩いてくる女に気づいた。
彼女は、ぼくと同じくらいの年齢だろうか。特徴的なのは、その髪だった。黒く、艶やかな、まるで墨を溶かしたようなストレートのロングヘア。風もないのに、その髪がわずかに揺れているように見えた。
すれ違う瞬間、ぼくはなんとなく彼女の顔を見た。
しかし、ぼくの視界に入ってきたのは、ただの白いぼんやりとした塊だった。
目も、鼻も、口も、何も描かれていない。
ぼくは驚き、思わず立ち止まった。
だが、彼女はぼくのことなど気にも留めず、そのまま通り過ぎていった。
ぼくは恐怖と混乱で、その場に立ち尽くしていた。
「見間違いだ。疲れているんだ」
そう自分に言い聞かせ、早足で家路についた。
翌日、ぼくは昨夜の出来事を友人に話した。
「そんな幽霊みたいな話、信じられるわけないだろ」
友人は笑い飛ばしたが、ぼくの胸のざわつきは収まらなかった。
その夜も、ぼくは同じ道を通って帰った。
街灯の切れ目に差し掛かったとき、再び彼女の姿が見えた。
昨日と同じ、黒いロングヘアの女。
今度は、怖くて顔を見ることができない。
うつむいて、早足で彼女を追い越そうとした。
だが、その瞬間、ぼくの耳元で、はっきりとした声が聞こえた。
ぼくは息を呑み、反射的に顔を上げた。
そこに立っていたのは、やはり顔のない女だった。
だが、その白いぼんやりとした表面には、くっきりと、ぼくの顔が浮かび上がっている。
恐怖で声も出ない。
ぼくは全速力で走り、家に駆け込んだ。
鍵を閉め、部屋の明かりをすべてつけた。
そして、恐る恐る鏡を覗いた。
翌朝、目が覚めると、ぼくは奇妙な感覚に襲われた。
自分の顔が、まるでぼんやりとした白い塊になってしまったような、漠然とした不安。
鏡を見ると、そこにはいつものぼくの顔が映っている。
だが、ぼくには確信があった。

























すごい!😎