そして、その穴から、声が聞こえる。
「鍵が、合わないの? 大丈夫だよ。ここなら、どこにも行けないから」
ぼくは、このアパートの部屋に囚われていることを悟った。
あの無数の画鋲の穴は、ぼくが逃げ出すたびに増えていた、この世界への入り口だったのだ。
そして、この世界は、もうぼくを外へは出してくれない。
今も、壁の向こうからノックする音が聞こえる。
コンコン、コンコン。
ぼくはもう、叩き返すことはしない。
もう、誰もここにはいないのだから。
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なんか見たことあるな草