なぜか、私たちの生活の“断片”が、そちらの家に転がっている。
再生を止めようとしたが、リモコンがきかない。
画面の中では、どこかで見たような後ろ姿が、ゆっくりとキッチンに立っていた。
──私だった。
画面越しに見た“私”は、うつむいたまま、何かを切っている。
服の色も、髪の結び方も、同じ。
だが、背中がほんの少しだけ、違う。
“なにか”を背負っているように見えた。
録画は3分で終わった。
そして、保存リストからは自動的に消えた。
操作履歴にも、残っていない。
以降、テレビは正常に戻った。
不思議な映像も、録画されることはなくなった。
ただ──数日後、息子がふいに言った。
「ねえママ、今日は“あっちのママ”出てこなかったね」
「“こっち”のママのほうが、こわくないから、ぼく、好きだよ」
私は、何も言えなかった。
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