俺は休日、自転車で走っている時に個人経営と思わしき古びたビデオ屋を見つけた。ガキの頃からアメリカンニューシネマやヌーベルヴァーグ、ニュージャーマンシネマ、キャノングループやエンパイアピクチャーズ、ロジャー・コーマン、ディノ・デ・ラウレンティス製作といった古今東西の映画を浴びるように見ていた根っからのシネフィルである俺は古びたビデオ屋の中へと入っていく。俺は店内のDVD、VHSを物色する背後から子供がパタパタと走る音が聞こえた。俺は振り返る足音は聞こえても人の姿がないのだ。
「俺の気のせいか・・・、それにしてもこのビデオ屋、AVばかりじゃないか・・・。ルイ・マルかトリュフォーの映画があればいいのに・・・」
俺はそう呟く。その時、トイレから店長と思わしき男が現れた。店長は
「いらっしゃい。何かお探しかね?」
という。俺は後ずさりした。なぜなら、レジには頭から血を流している女性が仁王立ちしていたからだ。店長はにこりと笑い
「ああ。レジにいる頭から血を流している女性に関しては気にするんな。昔から、ここのビデオ屋に出てくる幽霊なんだから」
という。俺は怖いもの知らずの店長に後ずさりした。店長は
「さっきからパタパタと走っているのがいるがあれも幽霊なんだ。気にすることはない」
という。この時、直感で俺はこのビデオ屋で何か商品を買わないといけないと思った。しかし、大半がAVだ。プロレスやアニメ、Vシネマのビデオ、DVDが申し訳程度に置かれていた。俺は
「なんかないか!?」
と焦っていた。その時、
「!」
俺はあるものに目を付けた。それは今は無きビデオ安売王が発売していた「ポカポンタス」のビデオであった。俺は恐る恐る「ポカポンタス」をビデオを店長に渡す。
「兄ちゃん。5000円」
俺は店長に5000円を渡すとビデオをビニール袋に入れる。俺は急いで、ビデオ屋を出た。
数分後、近くのコンビニの駐車場に自転車を止め、ビニール袋の中を見た。
「!」
ビニール袋の中には何も入ってなかったのだ。そこに俺の知り合いがやって来た。俺は知り合いに例のビデオ屋の事を話す。ビデオ屋の存在を知っていたのだ。知り合いは
「大鷹。お前、あの古びたビデオ屋に入ったんだな・・・。俺も大鷹と同じく被害にあったよ」
と俺の肩を叩く。数日後、俺は古びたビデオ屋に行ったが、すでに更地になっていたのだ。近隣住民にビデオ屋の事を聞いたが、近隣住民たちは
「ビデオ屋なんてあったのか?あそこは何十年前から更地だった」
と答えるのであった。
終わり

























なぜビニール袋は残ったのか。