私が幼いころは、よく缶蹴り遊びをした。
缶蹴りって、今の子供には説明がいるだろうか?
かくれんぼに、缶を蹴倒す・倒させないという攻防を合わせた遊び。
1人がオニってことになって、他の子供たちは子ってなる。
広場の真ん中などに缶を置く。
オニは、その缶を子に蹴り倒されないように守りつつ、隠れている子を探す。
子を見つけたら「〇〇君、見つけた!」と宣言したうえで、
缶を倒さぬように上から踏み抑える。これで〇〇君は負けた(捕まった)
ことになる。
缶を蹴り倒されずに全員の子を見つけ出したらオニの勝ちで終了。
全員を見つけ出す前に、子の誰かが缶を蹴倒したら、
それまでに見つけられた子は解放され、缶蹴り遊びは再スタート。
その日も缶蹴りをしていた。
オニはA。子は全員で4人。
子供の少ない山里の村だったので、その5人が村の子の全員だった。
子の私は早々に見つかり、缶から少し離れたところに座らされていた。
そしてAが最後の1人が潜んでいそうな納屋の中を覗こうと、
納屋の扉ににじり寄っていくのを眺めていた。
だがその時、別の場所に隠れていた最後の子が、
納屋とは全く逆方向から駆け込んできて缶を蹴り飛ばした。
すでに捕まっていた私たち他の子は解放されたことになり、
歓声をあげながら再びかくれんぼをするためにちりぢりに走り出した。
だが、Aの様子がおかしかった。
普通なら、オニのAは蹴り飛ばされた缶を拾いに行き、
元の場所に置きなおし、そこから遊びを再開する。
だがAは納屋の前から動かなかった。
子達が「あれ?どしたの?」と思い始めたころ、
突然にAは走り出し、広場から出ていってしまった。
子達は何が起こったのかわからない。
「なんだあれ?」
「缶を蹴られて悔しくて帰っちゃったの?ありえねー」
なんだか白けた雰囲気になって、グダグダな感じで
子達は解散し、それぞれ家に帰った。























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。