翌日、学校に現れたAに対して。
怒って文句を言う子もいたが、
Aは「ごめん」と謝り、まあ子供だったし、
すぐにまた皆、普通に仲直りをしていたと思う。
だがそれからしばらく、缶蹴りをしようとなっても
Aが嫌がり、参加しなくなった。理由は言わない。
よっぽど、あのときにオニ役で負けたのが悔しかったのか?
ただでさえ子供の数が少ない村の中で、遊びに参加しないAは、
だいぶ文句を言われることになったが、それでもAはかたくなに
缶蹴りに参加しなくなった。
ある日、とうとう子供たちでAを取り囲み
「なんで缶蹴りやらないの」と問い詰めた。
ゴニョゴニョとはっきりしない返事をしていたAは、
やがてボソッと
「指がかかってたんだもん。怖いもん。」
とつぶやき、泣き始めた。
Aをなだめすかしながら詳しく聞いたところ、
あの時にAが納屋に近づき、中を覗こうとしたとき、
納屋の扉の端に指かかっているのが見えたのだそうだ。
内側から誰かが扉に指をかけているのが。
缶蹴りは、子がオニに見つかったとしても、オニが缶の場所に
駆け戻って缶を踏んで、見つけた子の名前を叫ばなければ終わらない。
オニよりはやく缶まで走って、子が缶を蹴倒せば子の勝ちになる。
間違いなく、隠れている子が今にも扉を開いて飛び出して、
オニのAを出し抜いて缶に向けて走ろうとしている。
よし最後の子を見つけた、とAが思った瞬間、
背後で缶が蹴られていた。
「じゃ、誰だよあの指。
また見たときにはなかったよ、指。
でも飛び出してきそうじゃん。
納屋から。指のやつ。
だから帰ったんだって!」
























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