全部試してもいいのだが、もっと実行が容易なものが一つあった。
晴れた午後5時の夕暮れ時に坂を下るというものだ。
場所は相生坂という坂だ。
しかし、それだけの条件であれば行方不明者は後を経たないだろう。
何か、彼岸に呼ばれる因果があるか、霊的な素養があることが条件であるのか。
もしそれが隠れた条件であれば、今の私はどちらも満たしているのではないだろうか。
これなら特定の時間に坂を下るだけだ。
手順はシンプル。
彼岸に渡る資格は曖昧だが、そしたら他の方法を試せばいい。
失敗したとしても、現実の坂を上から下にくだるだけだ。
もちろん、戻れなくなる可能性ももちろんある。
戻れなかったとしても、その先に私という意識が残るのであればそれでいい。
あの子供がどんな反応をするのかも気になる。
数日後、有休申請をし相生坂を訪れた。
天気は晴れ。
坂上と坂下の標高差が20m程ある。
周囲に高層ビルがなくかなり遠くの街並みを一望できる。
夜であれば夜景が広がるであろうことが想像できた。
西日が差し込み、空が茜色に染まっている。
夕日とのコントラストで道脇に生えている木々の葉の青さが鮮やかに見える。
遥か遠くの山並みがこちらを見ている。
オカルトじみた儀式をいざ自分がやるとなると、自嘲的な気持ちになる。
午後5時、坂を下る。
一歩一歩ゆっくりと。
少し緊張している。
まだ特に変化が無い。
やはり、所詮はオカルトなのだろうか?
さらに坂を下る。
ぽつり ぽつり


























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