次の日の朝、ぼやけた目の輪郭を擦りつつポストを確認した。
そこには、ひっそりと赤い手紙が咲いていた。
ジリジリと照りつける日光の熱が肌からスーッと引いていった。
蝉がいつもより遠くからその鳴き声を届けているようだった。
土曜朝に手紙が入っていたということは、金曜の深夜帯〜土曜朝の間に投函されたことになる。
子供が投函するような時間帯じゃない。
それでも、手紙が入る時間帯は金曜の深夜から朝方にかけての時間に絞り込めた。
一体どんな人間がこんな奇妙な事をするのか、その姿を確かめずにはいられなかった。
次の金曜日、窓の外は既に群青の帳が降りていた。
ドアスコープを覗くと、銀のステンレス製のポストがいつも通り静かに鎮座していた。
来るなら早く来てほしかった。
手にはじっとりと嫌な汗をかいていた。
深夜2時頃、疲労感で気持ちが弛み始めていた。
その時、ドアスコープの右側からゆっくりと大きな人影がポストに近づいてきた。
アパートの照明がその後ろ姿を照らし出した。
それは、大柄の、少なくとも私の人生では見たことないくらい大柄の、おそらく男だった。
その男が私の部屋のポストに何かを投函しようとしていた。
私の全身の筋肉が強張るのが分かった。
ここで出ていって捕まえるのは命に関わると思った。
大男が一瞬こっちを見たような気がした。
その顔は影になっていて見えなかった。
大男はその赤い手紙を開き、何かを書き足す。
何を書いているのだろう?
氷柱が背骨に刺さり、染み込んでいくようだった。
大男は手紙を閉じてポストに投函し去って行った。
一連の男の動作が永遠にも思えるくらい長く感じた。
その間私は目を見開き、ドアスコープ越しに見ていることしか出来なかった。
一睡もできず、日が昇るとポストの中から手紙を乱暴に取り出し中身を確認すると、読めない文字の羅列の最後の行に
「よ む た?」
と平仮名で書かかれていた。
気持ち悪さで私は近くの交番に駆け込み起こったことを警官にしどろもどろになりながら説明した。
警官は近隣のパトロールを強化すると言ったが、私が食い下がると金曜の深夜帯に張り込んでくれると約束してくれた。
大男が現れると思われる時間帯を調査していたのが功を奏した。























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