「相変わらずノリが悪いねぇ犬井は。どうせ東京では三股くらいかけて、女と遊び倒してんだろ?」
「それはお前だろ。俺をお前みたいなチャラ男と同じにしないでくれ。」
だはっ!と吹き出した猿田を尻目に、ツマミの枝豆を口に運ぶ。
そこから暫くは談笑していたのだが、酔いが進むにつれて、猿田がこんなことを言い出した。
「そういやお前、浜田さんとこと仲良かったっけか」
いつになく真面目な顔をして言うので面食らった。
浜田さん一家に良くしてもらった日々を思い出して、心臓がほんの少しだけ締め付けられるような感覚になる。
「あぁ…良くしてもらったよ。」
「なら、辞めとくかぁ。この話は。 でさぁ!!」
急に舵を切り、全く興味の無い話題にしようとする猿田。
「おい、気になるだろ。言えよ。」
「え?熊ちゃん先生が女子の下着盗んでた話か?」
「いや、それも気になるけど…… 違う。浜田さんとこの話だ。」
ニヤリと笑う猿田。
昔からこうだ。こいつは、何も考えていないように見えて、実は俺の事をいつも手のひらの上で転がしてる。
今日だって、”東京コンプ”で怒ったように見せて、実は自分が怒れば俺が呑みに来る事を分かってたんじゃないかと思ってしまう。
「気になるか?浜田さんの話。」
ゴクリと生唾を飲んだ。
さっきのニヤケ顔はどこへやら。
いつもの猿田とは思えない、冷たい表情で、ポツリと語る。
「ため池だよ。」
「え?」
予想していなかったワードに驚きの声が出た。
「浜田さんちの裏の林の奥の方にため池があったんだよ。ため池のすぐそばには、一家全員分の靴が綺麗に並べられてたそうだ。」
「……どういうことだ?」
頭が回らない。アルコールのせいだろうか。
「さぁな。ため池に沈んでったんじゃないか? 靴があったし、浜田さんの奴って事で間違いなかったから、捜索には入ったよ。結果、なんにも見つからず、だ。」





















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