土曜日の午前1時。深夜徘徊が趣味な私は、今日も地元の小さな公園に足を運んでいた。その公園は小さなもので、ベンチと鉄棒、砂場しかない。当然私のような同業者はいないので、この時間にこの公園にいる人は見たことがない。
だが、その日は違った。公園に入った瞬間、異様な空気がそこに充満していた。そして、ほのかに悪臭がする。目に見えてわかるくらいに、今までとは空気が別物だった。
その原因はすぐにわかった。公園の奥のベンチに、人影があった。ベンチに座ったまま、微動だにせずコチラをじっと見ている。
ただこの時はただの酔っ払いだろうと思っていた。なので気にせず鉄棒で逆上がりをして、ベンチでスマホをいじり、砂場の砂に落書きをし、まるでガキみたいに公園を満喫していた。いつもと何ら変わりはない。一週間前に砂場に書いたアンパンマンの落書きが、今日まで残っていた。
さあ、いざ帰るぞとなった時、ふとあの人影に目をやった。たかが酔っ払いとはいえ、あまりにも幼い姿を見せてしまったかな。と、少し恥ずかしかったのだ。
ただその人影は、20分前、私が公園に来た時から一切動いていなかった。死んでる…?。だったらまずいと思い、一応安否の確認だけしに行った。
そこにいたのは、ビニールテープでぐるぐる巻きにされた、寝袋?のようなものだった。どうやら公園内の悪臭は、これから発せられているようだ。公園に入った時はそうでもなかったが、近くに行くと腐乱臭で鼻がやられた。
しばらく観察していると、たまに寝袋の足の方がピクリと微妙に動くことに気がついた。正直風によるものとも言える微小な動き方だが、その日は無風だった。
それを見ていると、好奇心が湧いてきた。落ちている木の枝で、その寝袋をツンとつついてみた。
その瞬間、寝袋が打ち上がった魚のようにピクピクと跳ねだし、ベンチに横になるように転がった後、ピクピクとベンチから落っこちた。それでもまだピクリりと踊るように跳ねていて、あまりの急な出来事に腰が抜けてしまった。
後ろに尻をつくようにコケたが、何かまずいことをしてしまったという恐怖から、走って逃げようとした。
すると、後ろからポンと肩を叩かれた。
「あ…あの、その、あれ触んない方がいいです!」
私がそう声をかけたが、肩を叩いた人は無視するばかりだった。こちらには一言も声をかけず、ただ自分の肩に手をかけてこちらをじっと見つめている。
肩を叩いた人の姿は見えなかった。男のようにも女のようにも、おばあちゃんのようにも青年のようにも見えた。
「あ、、もしかして、あの すみません!あれに触ってしまって、どうしたらいいですかね…」
「…」
「あ、すみません、あの…」
気まずい空気が流れた。何を言っても、あの人は無言を貫いている。
「あはは…あ、人違い?でした。失礼します。」
そう言って立ち去ろうとすると、ようやくそいつは口を開いた。
「かわいそうに」
その瞬間、足元にベチャッと何がが触れた。寝袋だった。ただ、それは今までのやつとは違う。頭部分のビニールテープが破れ、寝袋の中身が丸見えになっていた。
私はその中身を見てしまった。それは人間が見るにはあまりにも強烈だった。足がすくんで動かなくなり、自然とポロポロと涙が溢れだしてきた。その恐怖を前に、最終的に意識を失ってしまった。
起きた時にはそれらは消えていた。刺激臭で鼻血を出したのか、鼻が真っ赤になっていた。
























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