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都市伝説

林泰寧さんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

街に貼られたQR
短編 2025/07/24 20:50 1,182view
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 最初にそのステッカーを見た場所は、確か駅前のデパートの近くだった。買い物を終え何となく外を歩いていた時、入口すぐ前の電柱に貼られていたのだ。
 白地にQRコードだけ印刷されていて、上には普通の明朝体で「お悩み相談窓口」とだけ書かれてある。その時は悩みなんてものもなくて、ただ変なシールが貼ってあるなあ、とだけ思っていた。
 次に見かけたのは、パチンコ屋の向かいの壁だった。電圧か何かを制御する機械の蓋に、ポツンと一枚だけ貼られていた。その時も変なのが貼られてるなあ、くらいの感想だった。

 しかしそれからだろうか、そのステッカーが妙に気になり始めたのは。デパートやパチンコ屋の近くを通る度にシールの存在を確認するようになり、仕事中もその存在を思い出す時があった。
 ある時、駅前のハンバーガー屋の前の柱にも例のシールを見つけた。柱のかなり下の方に貼られていて、普通じゃ気づけないような場所にだ。

 最初、あのシールは落書きとかの類かと思った。スプレーやマーカーで書かれた読めない文字のすぐ近くに、勝手なシールがベタベタ貼られているのを見たことがあるだろう。例のシールはその仲間かと思っていた。

 しかしよく追っていくと、何かが違うということがわかった。確かにどこも人通りの多い場所だが、そういった落書きの群から外れた、むしろ避けているような場所に貼られていた。

 ……思い返せば、どれも駅前に貼られていた。三枚も貼られていたなら、もっとあるかもしれない。この駅前だけじゃなくて、別の所にもあったら……
 そう思ってネットを調べると、やっぱり情報があった。そして貼られていた場所も県外の公園や学校の前、繁華街、思ったよりも広範囲だった。しかし、もちろんとも言うべきか、スキャンしてみたという者はいなかった。

 そこで、試しにスキャンしてみることにした。あのパチンコ屋の前でシールを捜し、携帯のカメラでQRを読み取る。すると、一件のメールアドレスが現れてきた。恐らくここに相談の内容でも何でも送れということなのだろう。
 だから、特に問題となるような悩みこそなかったものの、そのメールアドレスに適当に内容を送ることにした。普段仕事の量が重いです、助けてください、というような内容だった。
 サッと書くだけ書いて、早速送信した。返事は来るかな、と思う間もなく通知が来た。その通知には短く「ご相談ありがとうございます。お悩みはすぐに解決するでしょう」と書かれていた。

 その日の家路は、酒を一滴も飲んでいないのに二日酔いの感覚がした。みっともないことに駅のホームで白線の前に立っている間、電車を待っているあの間につい眠ってしまった。

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コメント(1)
  • 最後に噛んでしまった感じがする。

    2025/07/25/17:12

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