先月、自分の勤めていた会社がとある同業他社(以下M社)と取引をすることになった。M社の名前を聞いたことはなかったが、上司からはその業界じゃ有名なんだぞと説明を受けた。
私はいわゆる営業の仕事を担当していて、まず契約を取る前にM社のサイトをチェックしろと言われた。やはり有名企業だからか、検索すると結果のいちばん上にサイトがヒットしたのを覚えている。白を基調としたデザインの、そこそこ小じゃれたサイトだった。
まずM社の会社概要を見て、それから製品情報、更新履歴に採用情報とどこの企業サイトにもあるページを見て回って、だいたいM社はこんな会社なのかとある程度納得した時だった。
(……あれ? ここ押せる)
その時はパソコンでサイトを見ていたから、リンクのある所にカーソルを合わせれば上を指す人差し指の絵が出てくるようになっている。その何もないところに置いていたカーソルが、なぜかクリックできる状態になっていたのだ。
それをクリックしてみると、その先にはたくさんの人名と年齢、性別、住所、電話番号と、誰のものかもわからない個人情報が載せられていた。しかもレイアウト自体は今までのものと全く同じだから、余計に気味が悪かった。だが、備考と書かれた部分だけはどれも空欄だった。
もしかしたらこのページはM社側が社員を管理するためのもので、本来非公開にすべきものをうっかり公開してしまったんだ。そう思うことにして、罪悪感と好奇心混じりにページをスクロールしていくことにした。
すると、備考の所に突然「覗き見をする不届き者」という文字が見えた。その欄をよく見てみると、そこには私の本名、年齢、住所、携帯の番号がはっきりと記されていた。この時には流石に怖くなり、急いでタブを閉じてサイトの履歴も全て消してしまった。
次の日上司にそのことを話したところ、そもそもM社という名前の会社の存在を知らないようだった。検索してみても、調べ方が悪かったのかM社のことは一件もヒットしなかった。あのページが何だったのかは未だにわからない。






















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