真後ろの声は突然語気を強め、支離滅裂で不明瞭な言葉を呪詛のように垂れ流し始めた。
心臓は破裂しそうだったが足は止めなかった。
目の前のトンネルが非常に短く、出口がすぐそこに見えたからだ。
トンネルへ駆け込んだところで肩の上のMが身じろいだ気がしたが、Mを気にかけるよりも1秒でも速く出口を抜けたかったので無視して走った。
左の太ももの熱が増していく。
水に足が取られ、よろけそうになるのを堪える。
いつの間にか真後ろの声は止まっていた。
出口が目の前に迫り逃げ切れると確信したその時だった。
もう一度真後ろから声が聞こえてきた。
先ほどの呪詛のような叫びからは考えられないほど明瞭で落ち着いた抑揚のない声が。
「後ロ向イテ」
今までとは違う・・・俺の声?
「・・・うわぁあああぁぁああああ!!」
「「「「向イタ向イタ向イタ向イ「だああうっせええええあああああああああああああ!!!!」
左肩から聞こえるMの悲鳴と、それに反応する真後ろの声をかき消すように叫び、出口から飛び出して草むらへ身を投げ出した。
倒れ込んだまま暫く息を整える。
早く遠くへ行きたいが、道は途切れ体力もない。
汗ばんだ体から11月の冷たい風が熱を奪っていくなか、やるだけやったと開き直り仰向けに寝転んだ。
・・・逃げ切った。
空に流れる星々を見ながら、何故かもう大丈夫だと、現実に戻ってきたと直感した。
周囲を探るべくポケットのライトを探すも見つからない。お守りもだ。
落としてきたみたいだが取りに戻る気にはなれず、諦めてMの様子を見る。
Mは再び気を失っていた。
思い返してみると、トンネルを抜ける直前にMはきっと後ろを向いてしまったのだ。
肩に担がれた状態では少し顔を傾けるだけで後ろが見えてしまう。
トンネル内で目を覚まし、状況を把握できないまま俺の声が聞こえ、反射的に顔を向けたのだろう。
もしMが二度と目を覚まさなかったらと怖い考えがよぎり、声を掛けられなかった。
しかし俺の不安とは裏腹に、あっさりとMは目を覚ました。
起き上がったMに声をかけ、事情を説明した。
足を踏み外して気を失ったこと、何者かに声をかけられ逃げてきたこと、後ろを振り返ったMが叫びまた気を失ったこと。
無言で俺の話を聞き終えたMは穏やかな表情で感謝述べてきた。
「有難ウ」























こわ~~~~~
投稿主さん
奇妙山→現在の知明山かな
もしあってたら奇妙山神教間歩で調べてみて。東大寺のお守りは最高のチョイスだったかもね